第1章

安全保障貿易管理とは

武器や軍事転用可能な物資・技術が、安全保障を脅かす国家・組織に渡ることを防ぐための管理制度です。規制の中心は「リスト規制」と「キャッチオール規制」の二つの柱です。

安全保障貿易管理(Security Trade Control)は、外為法に基づき、国際的な輸出管理レジームに参加しながら独自の輸出管理制度を運用する仕組みです。「リスクに応じた管理」が基本原則で、危険度の高いものに重点を置いた規制が行われています。

1-2 国際的な輸出管理レジーム

レジーム名規制対象
ワッセナー・アレンジメント(WA)通常兵器・汎用品・技術
核供給国グループ(NSG)核関連品目・技術
オーストラリア・グループ(AG)生物・化学兵器関連品目
ミサイル技術管理レジーム(MTCR)ミサイル関連品目・技術
歴史的経緯:COCOMとワッセナー・アレンジメント

COCOM(ココム/対共産圏輸出統制委員会)は、冷戦期の1949年に西側諸国が設立した輸出管理の国際協調体制です。ソ連・東欧諸国・中国などへの戦略物資・技術の輸出を制限することを目的とし、日本も1952年に参加しました。冷戦終結後の1994年に解散しました。

COCOMの後継として1996年に設立されたのがワッセナー・アレンジメント(WA)です。COCOMが特定の国(共産圏)を制限対象としていたのに対し、WAは特定の国を名指しせず、品目の機微度と用途・需要者のリスクに着目した制度へと転換されました。日本の現行の安全保障貿易管理制度はこのWAをはじめとする4つのレジームを基盤として構築されています。

1-3 規制の二つの柱:リスト規制とキャッチオール規制

安全保障貿易管理の核心は、性格の異なる2種類の規制を組み合わせることで「規制の穴」をなくす点にあります。

リスト規制
輸出令別表第1・1〜15項

品目の性能・仕様で判断する

あらかじめ法令で定めたリストに掲載された特定の貨物・技術を対象とする。品目がリストの性能基準値を超えるかどうかで規制対象を判断する。

対象品目:武器・原子力・化学兵器・生物兵器・ミサイル・先端材料・電子部品・コンピュータ・通信・センサ・航法・海洋・推進装置 等(1〜15項)

対象地域:原則として全世界(仕向地問わず)

根拠条文:外為法第48条、輸出令第1条

キャッチオール規制
補完的輸出規制

用途・需要者で判断する「網」

リストに掲載されていない品目(16項:非該当品)であっても、大量破壊兵器や通常兵器の開発等に転用されるおそれがある場合は許可が必要となる。

対象品目:食料・木材を除くほぼすべての工業製品・技術(HSコード25〜93類等)

対象地域:種類により異なる(下記参照)

根拠条文:外為法第48条、輸出令第4条第1項各号

1-4 リスト規制の詳細

リスト規制は、輸出令別表第1の品目リストに基づいて輸出を規制する仕組みです。品目ごとに性能・仕様の閾値(しきい値)が貨物等省令で定められており、その閾値を超えるかどうかで規制対象(「該当」)かどうかを判定します(→ 該非判定:第6章)。

特徴内容
判断基準品目の性能・仕様が法令の規定値を超えるかどうか。用途や需要者は原則として不問。
対象地域原則として全世界。ただしグループA(→ 付録)への輸出は一般包括許可等で簡素化可能。
許可の種類個別許可または包括許可(→ 第7章)
品目例高性能レーダー、特定の集積回路、炭素繊維、暗号通信装置、慣性航法装置 等
ポイント

リスト規制は「何を」輸出するかに着目した規制です。同じ品目でも性能が閾値以下であれば規制対象外となりますが、閾値を超えた瞬間に許可が必要になります。

1-5 キャッチオール規制の詳細

キャッチオール規制(補完的輸出規制)は2002年4月に導入されました。リスト規制の「穴」を補う役割を持ちます。

キャッチオール規制の2種類

WMD(大量破壊兵器)とは、核兵器・化学兵器・生物兵器およびミサイル(運搬手段)の総称です(Weapons of Mass Destruction)。キャッチオール規制はこのWMDへの転用リスクと、通常兵器への転用リスクの2種類に分けて規制されています。

種類対象となる転用用途対象地域とグループAの扱い根拠条文(主なもの)
WMDキャッチオール規制
(大量破壊兵器等)
核・生物・化学兵器およびミサイルの開発・製造・使用・貯蔵 全地域が対象
・武器禁輸国(B)・一般国(C):客観要件(用途・需要者)+インフォーム要件
・グループA:インフォーム要件のみ(客観要件は免除)
※グループA向けインフォームは「懸念国等への迂回輸出のおそれがある場合」に限定して適用。通常の取引では適用されない。
外為法第48条第1項(貨物)
外為法第25条第1項(技術)
輸出令第4条第1項第3号イ・ロ・第4号イ・ロ
通常兵器キャッチオール規制通常兵器(銃器・弾薬等)の開発・製造・使用 【改正前】グループA以外が対象
・武器禁輸国(B):用途要件+インフォーム要件
・一般国(C):インフォーム要件のみ(客観要件なし)
・グループA:対象外

【2025年10月〜】
・武器禁輸国(B):用途要件+需要者要件+インフォーム要件
・一般国(C):(一)特定品目は客観要件+インフォーム要件/(二)はインフォーム要件のみ
・グループA:インフォーム要件を新規追加(迂回輸出対策)
※グループA向けインフォームは「懸念国等への迂回輸出のおそれがある場合」に限定して適用。通常の取引では適用されない。
外為法第48条第1項(貨物)
外為法第25条第1項(技術)
輸出令第4条第1項第3号ハ・第4号ハ
2025年10月改正:通常兵器キャッチオールがグループAにも適用拡大

2025年10月9日施行の制度改正により、従来はキャッチオール規制が一切適用されていなかったグループA向けの通常兵器キャッチオール規制について、経済産業大臣からインフォーム通知を受けた場合は許可申請が必要となりました(インフォーム要件の新規追加)。背景にはグループA国を経由したロシアへの迂回輸出への懸念があります。なおWMDキャッチオールのグループAへのインフォーム要件は改正前から存在していましたが、通常兵器については今回が初めての適用です。

重要:グループA向けのインフォーム要件は、あくまで「懸念国等への迂回輸出のおそれがある場合」に限定して適用されます(外為法第25条第2項・第48条第2項)。通常のグループA国(ベルギー・スイス・アルゼンチン等)との正規の商取引では、経済産業大臣からインフォーム通知を受けることはありません。インフォームは最終手段として位置付けられており、実務上の影響は限定的です。

また同改正では、キャッチオール規制の対象品目である16項が(一)と(二)に区分されました。(一)特定品目(工作機械・集積回路・レーダー・航空機部品等)は安全保障上の懸念が特に高い品目として、一般国(中国・ロシア等)向けに客観要件(用途要件・需要者要件)+インフォーム要件が課されます。一方、(二)工業製品全般については一般国向けでも従来どおりインフォーム要件のみです。規制強化の対象を「懸念の高い特定品目」に絞ることで、輸出者の負担と貿易への影響を最小限に抑えながら実効性を確保する仕組みです(→詳細は5-3節)。

許可が必要となる3つのトリガー

インフォーム(行政通知) =「国から通知が来た場合」
経済産業大臣から「大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれがある」または「通常兵器の開発・製造・使用に用いられるおそれがある」旨の通知(インフォーム通知)を受けた場合。WMD・通常兵器の両キャッチオール規制に共通して適用され、通知を受けた時点で許可申請が義務付けられる。
客観的懸念(輸出者自身の判断) =「危ない使われ方をしそうだと自分で気づいた場合」
インフォームがない場合でも、輸出者が用途確認・需要者審査を通じて「大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれがある」または「通常兵器の開発・製造・使用に用いられるおそれがある」と客観的に判断できる場合。
外国ユーザーリスト(EUL)掲載企業への輸出 =「経産省の要注意リストに載っている相手への輸出」
需要者が経済産業省の外国ユーザーリストに掲載されている場合、懸念用途に使用されないことが明らかな場合を除き、許可申請が必要。

客観的懸念を判断する主なチェック項目(レッドフラッグ)

確認項目懸念があるケースの例
需要者の性格・事業内容軍・政府機関との密接な関係、WMD関連の研究実績がある
用途の説明通常の民間用途に比べて不自然、用途の説明を拒否する
発注量・仕様通常の用途に比べて過剰な数量、用途と一致しない仕様
仕向地の状況WMD開発が懸念される国・地域、懸念国経由の迂回輸送
支払・取引条件不自然な支払方法、第三者が代金を支払う、業界慣行から逸脱した条件
EUL掲載需要者または最終使用者が外国ユーザーリストに掲載されている

「懸念なし」と判断した場合の記録保管

キャッチオール規制の対象品目を輸出する際、許可申請が不要と判断した場合でも、その判断の根拠を記録・保管しておくことが強く推奨されます。

記録すべき内容の例

・需要者の企業概要・事業内容(ウェブサイト・カタログ等から収集した情報)

・用途に関する説明書類(エンドユーザー証明書、注文書の記載内容等)

・EUL(外国ユーザーリスト)への非掲載確認(確認日・確認者を記録)

・レッドフラッグ該当なしの確認結果

1-6 リスト規制とキャッチオール規制の総合判定フロー

1
リスト該非判定輸出令別表第1の1〜15項に該当するか確認。該当すれば→リスト規制の許可申請へ(第7章)。
2
16項(非該当品)の確認リスト非該当(16項)でも、キャッチオール規制の検討が必要(食料・木材は除く)。
3
仕向地の確認仕向地がグループAか確認。グループAであればWMDキャッチオールのインフォーム要件は「迂回輸出の懸念がある場合に限定」して適用(通常取引では適用なし)。グループB〜Dは両方のキャッチオール規制が適用。
4
インフォームの有無を確認経済産業省からインフォーム通知を受けていないか確認。受けていれば→許可申請が必要。
5
需要者・用途の審査(客観的懸念の確認)EUL確認、レッドフラッグの有無、最終用途・最終需要者の確認を実施。懸念があれば→許可申請が必要。
6
問題なければ輸出可(記録保管)懸念なしと判断した根拠を書面で記録・保管する(事後確認に備える)。
典型的な違反リスク:「リスト非該当だから問題ない」という思い込み

リスト規制に非該当であっても、キャッチオール規制の確認を怠ることが違反の典型例です。一般的な工業製品・計測器・ポンプ・化学品であっても、WMD開発施設に使用された事例が実際に発生しています。「民生品だから」「いつもの取引先だから」という判断は危険です。

第2章

法令の体系

外為法を頂点とした法令体系に基づいています。
外為法
輸出貿易管理令
外国為替令
経済産業省令・告示

2-1 主な法令の概要

法令名主な内容
外為法対外取引管理の基本法。許可義務・報告義務等を規定
輸出貿易管理令(輸出令)輸出許可が必要な貨物のリスト(別表第1)等を規定
外国為替令役務取引(技術提供)の許可が必要な場合を規定
貨物等省令リスト規制品目の性能・仕様等の詳細を規定

2-2 規制される「行為」

貨物の輸出

物品を日本から外国へ送り出すこと

技術の提供

技術情報(プログラムを含む)を非居住者へ提供すること(国内でも規制対象)

仲介貿易等

日本を経由しない外国間取引でも許可が必要な場合がある

注意

リスト規制(1〜15項)に該当する技術の「提供」は、非居住者へのメール・口頭説明・セミナー等も含まれます。物の輸出がなくても許可が必要になる場合があります。
※リスト規制に非該当の技術(16項)を口頭で提供する場合は役務取引許可は不要です(→ 7-11節参照)。

「係る技術」と「必要な技術」の規制範囲

外為令別表では技術の規制範囲を表現する用語として「係る技術」と「必要な技術」が使い分けられています。「係る技術」の方が規制範囲が広く、「必要な技術」の方が狭い概念です。

用語規制範囲具体的なイメージ
係る技術広い貨物の設計・製造・使用に関連する技術全般。直接的に必要でなくても、その貨物に関連する技術を広く含む。
必要な技術狭いその貨物を使用・運用するために必要最小限の技術。用途を特定の目的に限定した狭い範囲の技術。

※7-11節Bの最低限技術の特例(第12号)では「据付・操作・保守・修理のための必要最小限の技術」として「必要な技術」に近い概念で許可不要の範囲を規定しています。

2-3 規制される「者」(輸出者等)

外為法の安全保障貿易管理は、以下の者(輸出者等)を義務の名宛人としています。

区分対象となる者根拠
輸出者貨物を日本から輸出しようとする者(法人・個人を問わない)。通関名義人ではなく、輸出取引の当事者(契約上の輸出者)が原則として義務を負う。外為法第48条第1項・輸出令第1条
役務提供者規制技術を外国において提供することを目的とする取引を行う居住者・非居住者、または規制技術を非居住者(特定類型該当者を含む)に提供することを目的とする取引を行う居住者。外為法第25条第1項
仲介貿易取引を行う者外国相互間の貨物の売買・貸借・贈与に関する取引を行う居住者(貨物が日本を経由しない場合を含む)。外為法第25条第4項
「輸出者」は通関業者ではなく取引の当事者

実際の通関手続きを通関業者に委託した場合でも、外為法上の「輸出者」は輸出取引の契約当事者(売主)です。通関業者による代理申請は可能ですが、輸出許可の名義は輸出者本人となり、許可取得義務・管理義務も輸出者本人が負います。

2-4 主要法令の条文構造(外為法・輸出令)

安全保障貿易管理の実務に特に関係する外為法と輸出令の主要条文は以下の通りです。

【外為法の主要条文】

条文タイトル内容と位置づけ
第25条第1項 役務取引の許可(技術の提供) 居住者または非居住者が、外為令別表1〜15項に該当する技術(プログラムを含む)を特定国において提供すること、または特定国の非居住者に提供することを目的とする取引を行おうとする場合、経済産業大臣の役務取引許可が必要。役務取引許可の基準は役務通達に規定されている。
第48条第1項 貨物の輸出許可 特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物を輸出しようとする者は経済産業大臣の輸出許可を受けなければならないと規定。具体的な対象貨物・地域は輸出令別表第1に定められている。輸出許可の基準は運用通達に規定されている。
役務通達と運用通達は別物

「役務通達」(外為法第25条第1項等の運用通達)は技術の提供(役務取引許可)に関するルールを定めたものです。一方「運用通達」(輸出貿易管理令の運用について)は貨物の輸出許可に関するルールを定めたものです。両者は別の通達であり、役務取引許可基準は役務通達に、輸出許可基準は運用通達に、それぞれ規定されています。

【輸出令の主要条文】

輸出貿易管理令(輸出令)の中で、安全保障貿易管理の実務に特に関係する条文は以下の3つです。

条文タイトル内容と位置づけ
第1条 輸出の許可 外為法第48条第1項を受け、別表第1の1〜15項に該当する貨物を一定の地域に輸出しようとする者は経済産業大臣の許可を受けなければならないと規定。リスト規制の根幹となる条文。
第2条 輸出の承認 外為法第48条第3項を受け、安全保障以外の政策目的(外交政策・条約実施・需給調整等)で特定の貨物の輸出に承認を義務付ける条文。「許可」とは別の制度で、主にワシントン条約(CITES)対象品・文化財・特定の化学品等が対象。安全保障貿易管理とは別の規制として、実務上は混同しないことが重要。
第4条 特例(許可不要の例外) 第1条の許可が必要な貨物であっても、一定の要件を満たす場合に例外的に許可を不要とする条文。少額特例・無償返送特例・暗号特例等が規定されており、実務上頻繁に参照される(→ 第7章7-11で詳述)。
「許可」と「承認」は別の制度

輸出令第1条に基づく「許可」(安全保障目的)と第2条に基づく「承認」(その他の政策目的)は根拠条文・対象品目・申請窓口がそれぞれ異なります。本テキストの主要テーマは前者(許可)ですが、輸出する貨物によっては両方の確認が必要になる場合があります。

参考:ワシントン条約(CITES)に基づく輸出承認

輸出令第2条の「承認」が適用される代表例がワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)に基づく規制です。象牙・サンゴ・特定の植物・剥製・毛皮製品など、条約附属書に掲げる動植物およびその加工品を輸出する場合は、安全保障目的の「許可」とは別に、経済産業省(貿易管理部 野生動植物貿易審査室)への輸出承認申請およびCITES輸出許可書の取得が必要となります。

なお、安全保障上の「許可」(輸出令第1条)とCITES「承認」(輸出令第2条)の両方が同時に必要になるケースは実務上ほとんど発生しません。安全保障規制の対象(先端機器・化学品・電子部品等)とCITES規制の対象(野生動植物・その加工品)はカテゴリが全く異なるためです。ただし例外として、以下のような場合は複数の規制が重なることがあります。

品目例重なる規制の例
象牙を使用した特殊工芸品・装飾部品(軍装品等)CITES承認(輸出令第2条)+輸出令第1条の1の項(武器)に該当する可能性
特定の化学品・生物由来物質(研究用試薬等)CITES承認(輸出令第2条)+リスト規制(輸出令第1条・3の2の項等)の確認が必要な場合
特定の植物由来素材を使用した先端素材CITES承認(輸出令第2条)+輸出令第1条の5の項(先端材料)の確認が必要な場合

取り扱う品目がCITES規制の対象か否かは、経済産業省「ワシントン条約規制対象種の調べ方」ページで確認できます。

第3章

居住者・非居住者の判定

「国籍」ではなく「生活の本拠」で判断します。外為法における重要な概念です。

3-1 定義

外為法第6条第5号(居住者)・第6号(非居住者)で定義されています。判定の詳細基準は「外国為替法令の解釈及び運用について」(昭和55年11月29日付蔵国第4672号・解釈通達)に定められています。

居住者(日本に生活の本拠がある者)

・日本に住所・居所を持つ自然人
・日本に本店を置く法人
・日本在住の外国人(入国後6月以上経過 または 日本の事務所に勤務)
・居住者と同居しその生計費を専ら負担されている家族
※非居住者の在日支店・出張所は「居住者とみなす」(外為法6条5号ただし書)

非居住者(日本に生活の本拠がない者)

・外国に住所・居所を持つ自然人
・外国法人・外国政府機関
・在日外国公館勤務の外交官・領事官等(解釈通達により非居住者)
・日本在住の外国人(入国後6月未満 かつ 日本の事務所に非勤務)
・非居住者と同居しその生計費を専ら負担されている家族

外国人の居住性判定の2つの基準(解釈通達)

外国人の居住性は以下のいずれか一方を満たせば「居住者」と推定されます。
① 本邦内にある事務所に勤務する者(入国後の期間は問わない)
② 本邦に入国後6月以上経過した者(勤務先は問わない。留学生・研究者も含む)

ただし①②に当てはまる場合でも、外交官・在日外国公館勤務者・外国政府公務員等は解釈通達により「非居住者」として扱われます。

3-2 判定ケース一覧

外国人の居住性は「国籍」ではなく、①事務所勤務の有無②入国後6月経過の有無で判断します。どちらか一方を満たせば「居住者」です。

【外国人(自然人)のケース】

ケース 判定 適用基準 根拠・ポイント
日本企業に勤務する外国人(入国直後) 居住者 ①事務所勤務 入国後6月未満でも「本邦内の事務所に勤務」するため居住者。技術提供にみなし輸出規制は不適用。
外国人留学生(入国後6月未満) 非居住者 どちらも未該当 ①事務所勤務なし、②6月未満のため非居住者。規制技術を提供する場合はみなし輸出として許可が必要。
外国人留学生(入国後6月以上経過) 居住者 ②6月経過 入国後6ヶ月を超えると居住者扱いになりますので、当該留学生に技術提供を行う場合の許可申請は不要になります(経産省Q&A)。ただし「特定類型該当者」(第4章参照)の確認は引き続き必要。
外国人研究者(大学・研究機関に雇用、入国直後) 居住者 ①事務所勤務 大学・研究機関も「事務所」に該当する。雇用されている(勤務している)ため入国直後でも居住者。
招聘・訪問研究者(日本機関に雇用されていない、6月未満) 非居住者 どちらも未該当 雇用関係がなく(①不該当)、6月未満(②不該当)のため非居住者。技術説明・セミナー等はみなし輸出の対象となりうる。
招聘・訪問研究者(日本機関に雇用されていない、6月以上滞在) 居住者 ②6月経過 勤務関係はなくても6月以上経過で居住者となる。
短期出張・商談で来日した外国人(数日〜数週間) 非居住者 どちらも未該当 一時的な来日で①②どちらも満たさない。技術的な打ち合わせ・デモ等は要注意。
観光・短期滞在の外国人(数か月以内) 非居住者 どちらも未該当 同上。
在日外国大使館・領事館勤務の外国人外交官 非居住者 特別規定 ①②を満たしても、解釈通達の特別規定により非居住者。「外交官又は領事官及びこれらの随員または使用人」は非居住者として扱う。
外国政府・国際機関の公務を帯びる者(在日) 非居住者 特別規定 解釈通達により非居住者として扱われる。
日本在住の外交官の家族(同居・被扶養) 非居住者 特別規定 居住者または非居住者と同居し生計費を専らその者に負担されている家族は、その者の居住性に従う(解釈通達)。
日本在住の外国人(在日本社員の家族、被扶養・同居) 居住者 ②または家族規定 6月以上経過していれば②で居住者。または居住者と同居し被扶養であれば家族規定で居住者。
日本在住の日本人と結婚した外国人配偶者(入国後6月未満・専業主婦/主夫等) 居住者 家族規定 居住者(日本人配偶者)と同居し、その生計費を専ら負担されている家族は、その者(日本人配偶者)の居住性に従う(解釈通達)。入国後6月未満・日本の事務所に勤務していなくても居住者となる。

【日本人(自然人)のケース】

ケース 判定 根拠・ポイント
日本に住所を持ち日本で就業している日本人 居住者 日本人は原則居住者。解釈通達でも「本邦人は、原則として、居住者として取り扱う」と規定。
海外赴任中の日本人(2年以上の予定) 非居住者 解釈通達で「外国に居住することを目的として出国する者および外国に2年以上居住している者」は非居住者として扱う。赴任先に生活の本拠が移ったと判断される。
海外赴任中の日本人(2年未満の短期赴任見込み) 居住者 短期の場合は生活の本拠が日本にあるとみなされることが多い。ただし実態・期間により異なる。
海外出張中の日本人(数日〜数週間) 居住者 一時的な不在で生活の本拠は日本のまま。ただし出張先で非居住者に技術を提供する場合は役務取引許可が必要になりうる。
外国に1年以上在住する日本人客員研究員・客員教授 非居住者 2年以上は明確に非居住者。1年程度の場合は実態(家族の居所・帰国頻度等)を総合判断する。

【法人・組織のケース】

ケース 判定 根拠・ポイント
日本に本店を置く株式会社(外資系でも可) 居住者 法人の判定基準は「本店の所在地」。出資者・親会社の国籍は問わない。
外国に本店を置く外国法人 非居住者 外国法人はすべて非居住者。在日支店があっても法人格は外国法人のまま。
外国法人の日本支店・出張所 居住者
(みなし)
外為法第6条第5号ただし書の「みなし居住者」規定により、非居住者(外国法人)の在日支店・出張所は居住者とみなす。在日支店に勤務する外国人を扱う際に重要。
日本法人の海外子会社(50%超資本でも) 非居住者 外国で設立された外国法人であり非居住者。グループ内取引でも「輸出」「技術提供」として規制対象。
在日外国大使館・領事館
(組織として)
居住者
(みなし)
外為法第6条第5号ただし書きにより、本邦内に所在する外国政府・外国法人の事務所は居住者とみなす。ただし大使館員(外交官・領事官等)個人は解釈通達により非居住者。→下記の詳細ボックス参照。
在日外国大使館・領事館勤務の外交官・領事官個人 非居住者 解釈通達の特別規定により、大使館等に勤務する外交官・領事官およびその随員・使用人は、在日期間・勤務形態にかかわらず非居住者として扱う。
在日外国軍隊(在日米軍等) 非居住者 外国の軍隊は「本邦内に主たる事務所を有する法人」ではなく、外為法第6条第5号ただし書きの「みなし居住者」規定の適用対象外。本邦内に所在していても非居住者のまま。→下記の詳細ボックス参照。
実務上の重要ポイント:在日大使館・在日米軍への貨物・技術の提供

在日大使館と在日外国軍隊は、どちらも本邦内に所在しますが、居住性の扱いが異なります。これにより、貨物の輸出規制(第48条)と技術の提供規制(第25条)の適用結果が変わります。

納品先組織の居住性貨物(輸出令該当品)の納品技術(外為令該当品)の提供
在日外国大使館 組織は居住者(みなし) 「輸出」に非該当→許可不要
(国内取引として扱われる)
外交官(利用者)が非居住者→許可必要
(非居住者への提供として扱われる)
在日外国軍隊(在日米軍等) 組織も非居住者 非居住者への譲渡→許可必要
(「輸出」に該当する)
非居住者への提供→許可必要

※技術の提供規制(第25条)は「非居住者に提供することを目的とする取引」を規制するため、在日大使館向け技術提供については、組織(大使館)が居住者でも、実際に技術を利用する外交官個人が非居住者であることが根拠となります。

2022年改正後の重要注意点:「居住者」でも油断禁物

入国後6月以上の外国人留学生・研究者は居住者として扱われ、技術提供の許可申請は不要です。しかし2022年5月施行の改正により、居住者であっても外国政府・外国法人から資金・指揮命令等を受けている「特定類型該当者」への技術提供は、みなし輸出として許可が必要となりました(第4章参照)。
たとえば、外国政府から奨学金を得ている留学生、海外企業・大学に雇用されている学生は、入国後6月以上経過して居住者になっていても特定類型に該当する可能性があります。居住者判定と特定類型該当性確認は別の問題として両方確認が必要です。

3-3 「みなし輸出」管理

みなし輸出の具体例

・国内研究室で外国来訪者(非居住者)に規制技術を説明する
・工場見学で外国企業の社員(非居住者)に製造プロセスを見せる
・日本語のセミナーでも参加者に非居住者がいれば規制対象となりうる

実務上のポイント

技術提供を行う際、相手方が居住者か非居住者かを確認する手続きを社内で整備しておくことが重要です。外国人研究者・技術者が多い職場では、入社時や共同研究開始時に確認の仕組みを設けることが望まれます。

第4章

外国勢力から資金提供等を受けている者の特例

2022年5月施行の外為法改正により、居住者であっても「特定類型」に該当する者への技術提供は、みなし輸出として許可が必要となりました。

4-1 特例創設の背景

従来のみなし輸出管理では、入国後6月以上経過または国内事務所に勤務する外国人は「居住者」として扱われ、居住者間の技術提供は規制対象外でした。しかし近年、日本国内に居住する研究者・技術者が外国政府・外国企業から資金や指示を受け、日本の機微技術が流出するリスクが増大しました。

改正のポイント(外為法第25条第1項・役務通達改正 2022年5月1日施行)

居住者への技術提供であっても、提供先が外国政府・外国法人の強い影響下にある「特定類型」に該当する場合は、みなし輸出管理の対象として経済産業大臣の許可が必要です。
特定類型に該当するからといって直ちに安全保障上の懸念がある者とみなされるわけではありませんが、個別の審査が必要となります。

4-2 特定類型の3種類

「特定類型」は以下の3つに分類されます(役務通達別紙1-2)。いずれかに該当する居住者への規制技術提供は、みなし輸出として許可申請が必要です。

特定類型① 雇用契約等に基づき外国政府等・外国法人等の支配下にある者

外国法人等または外国政府等との間で雇用契約・委任契約・請負契約その他の契約を締結しており、当該契約に基づき指揮命令に服する、または活動内容の報告義務を負っている者。

場面具体例
大学・研究機関外国大学と兼業(クロスアポイントメント含む)している教職員、外国企業に勤務している社会人学生
企業外国企業と兼業している従業員、外国企業の取締役・監査役に就任している者
「外国法人等」の範囲

国内に拠点を持たない外国企業が対象です。外資系企業(外国企業の子会社である日本法人)は含まれません

特定類型② 経済的利益に基づき外国政府等の実質的な支配下にある者

外国政府等から多額の資金提供・奨学金・研究費等の経済的利益を個人として受け取っており、これにより外国政府等の実質的な支配下にあると認められる者。

場面具体例
大学・研究機関外国政府から留学資金の提供を受けている学生、外国政府の理工系人材獲得プログラムに個人として参加し多額の研究資金・生活費を受けている研究者
企業外国政府から過去に貸与された留学資金について雇用後に返済免除された従業員、外国政府の人材獲得プログラムに個人として参加している研究者
「個人として」が重要

資金提供の受け手が大学・研究室・企業である場合は原則として特定類型②には当たりません。あくまで個人として受け取っていることが要件です。

特定類型③ 国内において外国政府等の指示の下で行動する者

外国政府等から、日本国内における行動に関して具体的な指示・依頼を受けて行動している者。①②と異なり、契約や経済的利益の有無を問いません。

具体例
日本における行動に関し外国政府等の指示や依頼を受けて活動している者(機関・職種を問わない)

4-3 3類型の優先度・関係性の整理

3つの特定類型は、外国政府等との関係の性質により区別されます。

類型関係の根拠主なポイント外資系日本法人の扱い
契約(雇用・委任・請負等)指揮命令または報告義務が契約上存在する。最も明確に確認しやすい類型。含まれない
経済的利益(資金提供等)契約がなくても実質的支配が認められる場合に適用。資金額・条件等を総合判断。含まれない
指示・依頼①②に当てはまらない場合でも、外国政府等の指示下にある場合は対象。契約・金銭は不要。含まれる可能性あり

特定類型①の「除外」:日本法人の指揮命令が優先する場合

外国法人等とも契約を結んでいる者であっても、以下のいずれかの場合は特定類型①に該当しません

除外される場合具体的な要件
① 日本法人の指揮命令が優先する旨の合意がある場合 当該者が日本法人との契約に基づき日本法人の指揮命令に服しており、かつ日本法人または当該者と外国法人等との間で「日本法人の指揮命令(または善管注意義務)が優先する」旨を合意していること(役務通達)。
→ この合意があれば、外国法人等と兼業していても特定類型①には該当しない。
② 親子会社関係にある場合(50%超保有) 当該者が日本法人と外国法人等の両方と契約を結んでいる場合で、次のいずれかに該当するとき:
・外国法人等が日本法人の議決権の50%以上を直接または間接に保有する(外国法人等が親会社)
・日本法人が外国法人等の議決権の50%以上を直接または間接に保有する(日本法人が親会社)
→ グループ内の親子関係であれば特定類型①には該当しない。
実務上のポイント:「指揮命令優先の合意」の活用

クロスアポイントメント等で外国大学・外国企業と兼業関係にある研究者・従業員であっても、日本法人側の指揮命令が優先することを契約書・覚書等で明記することにより、特定類型①から除外できます。外国機関との連携協定・契約書の作成・見直しの際に、この条項を盛り込むことが実務上の重要な対応策となります。

実務上の判断の流れ

①→②→③の順に確認していくことが一般的です。契約書・履歴書・申告書等の通常取得する書面から確認できる範囲で判断すればよく、特別な調査義務は課されていません。ただし経済産業省から特定類型該当の可能性について連絡を受けた場合は、原則として該当するものとして管理する必要があります。

4-4 技術提供者の確認義務と対応

技術を提供する側(大学・企業等)は、相手方の特定類型該当性を通常果たすべき注意義務の範囲で確認する必要があります。

相手方の立場確認方法
提供者の指揮命令下にある者
(従業員・教職員・学生TA等)
採用時に誓約書等による自己申告で確認。採用後は新たに特定類型に該当した場合の報告義務を課すことで管理。就業規則等で副業・利益相反行為が禁止・届出制であれば報告義務があると解釈できる。
指揮命令下にない者
(学生・特別研究員・招聘教員・名誉教授・取締役等)
通常取得する書面(出願書類・履歴書等)に記載された情報から確認。特別な調査は不要。

経済産業省からの「連絡」があった場合

特定類型③(国内で外国政府等の指示の下で行動する者)は、その性質上、民間の提供者が独自に該当性を判断することが難しいため、経済産業省から提供者に対して「連絡」を行う方法で運用することが想定されています(役務通達)。

連絡の対象類型連絡があった場合の対応注意義務違反となる場合
特定類型①・②の可能性原則として、その者は特定類型に該当するものとして管理する。保有情報と異なる客観的根拠があれば反証可能(その場合は経産省に相談)。連絡を受けたにもかかわらず漫然と技術提供を続けた場合は注意義務違反となる。
特定類型③の可能性同上。経産省からの連絡が、実質的に③を運用する主な手段となる。同上。
「連絡」はキャッチオール規制の「インフォーム」とは別概念

特定類型に関する経産省からの「連絡」は、キャッチオール規制における「インフォーム通知」(第1章参照)とは別の概念・制度です。混同しないよう注意してください。また、ガイドラインに従った確認を行っていれば、相手方が特定類型に該当していたことに気づかなかった場合でも、外為法上の刑事罰・行政処分の対象にはならないとされています。

4-5 規制の対象関係まとめ

技術提供の相手方規制の根拠必要な対応
非居住者外為法第25条(みなし輸出・従来どおり)原則として許可申請が必要
居住者かつ特定類型該当者外為法第25条第1項ただし書き(2022年改正)経済産業大臣の許可が必要
居住者かつ特定類型に非該当規制なし許可不要(通常の管理)
見落としやすいケース

・日本人研究者でも外国政府の奨学金を個人として受けている場合は対象となりうる
・外国企業との共同研究で外国側から個人的に費用が支払われているケース
・外国政府主導の「タレントプログラム(海外人材獲得プログラム)」への参加者
・居住者として確認済みの外国人でも、その後に外国法人と兼業を開始した場合

第5章

規制の対象

輸出令別表第1は全16項(3の2項を含む)で構成されます。1〜4項(3の2項含む)は大量破壊兵器・武器関連、5〜15項はデュアルユース汎用品、16項は非該当品です。

5-1 1〜4項および16項

分類主な品目例
1項武器銃器、弾薬、爆発物、戦車、軍用機、軍用船舶 等
2項原子力核燃料物質(ウラン・プルトニウム)、核反応炉 等
3項化学兵器サリン等の毒性化学物質、前駆体化学品 等
3の2項生物兵器天然痘ウイルス等の病原体、ボツリヌス毒素 等
4項ミサイル・無人航空機弾道ミサイル、巡航ミサイル、無人機(射程300km超等)等
16項非該当品1〜15項のいずれにも該当しない一般貨物
注意:3の2項という特殊な番号

生物兵器関連は「4項」ではなく「3の2項」です。3項(化学兵器)と4項(ミサイル)の間に追加されたため、このような枝番号になっています。「4項=生物兵器」と誤認しやすいので注意が必要です。

5-2 5〜15項(デュアルユース汎用品)の詳細

5項先端材料

炭素繊維・アラミド繊維、高機能セラミックス(炭化ケイ素等)、超電導材料、チタン合金・タングステン合金等の特殊金属、耐放射線材料 等

6項材料加工

等圧プレス装置(HIP)、精密工作機械(高精度NC旋盤等)、CVD装置、電子ビーム加工装置、特殊溶接装置 等

7項エレクトロニクス

高性能集積回路(特定クロック以上のMPU等)、高速AD変換器、高周波電力増幅器、クライストロン・マグネトロン等、耐放射線性電子部品 等

8項コンピュータ

高性能コンピュータ(特定演算性能以上)、スーパーコンピュータ用部品・技術、AI・機械学習用特定処理装置、量子コンピュータ(特定量子ビット数・エラー率以上のもの)等

※量子コンピュータは2024年9月施行の省令改正でリスト規制対象に追加。物理量子ビット数(34個以上等)とC-NOTエラー率の組み合わせで規制スペックが定められている。

9項通信・情報セキュリティ

暗号機能付き通信装置(特定鍵長以上)、拡散スペクトラム通信装置、衛星通信地球局、サイバーセキュリティ関連ソフトウェア 等

10項センサ・レーザー

高性能レーダー(合成開口レーダー等)、赤外線センサ・撮像装置、高出力レーザー(特定出力以上)、レーザー測距装置、高精度重力計・磁力計 等

11項航法関連

慣性航法装置(INS:高精度ジャイロ等)、衛星航法受信機(GPS等特定精度以上)、無人機(UAV)用航法システム、アビオニクス装置 等

12項海洋関連

潜水装置(有人・無人潜水艇)、高性能ソナーシステム、磁気異常探知(MAD)装置、特殊船舶用装置 等

13項推進装置

航空機用ガスタービンエンジン(特定推力以上)、固体・液体ロケットエンジン、特殊推進剤(高エネルギー燃料)、ターボポンプ 等

14項武器に当たらぬ軍需品

軍用車両・軍用車両部品、軍用爆発物処理装置、軍用シミュレータ、軍用ヘルメット・防護服(NBC防護服含む)、軍事目的の潜水装置 等

15項機微品目

武器関係への転用懸念が大きい品目。爆発物検知装置・高速度カメラ・核放射線検知器・特殊環境試験装置など、上記5〜14項に含まれないが軍事転用リスクの高い汎用品 等

デュアルユースの考え方

5〜15項の品目は民生用として広く流通しますが、性能・仕様が一定の閾値を超えると規制対象となります。「民生品だから大丈夫」という判断は危険です。必ず貨物等省令の規定値と照合した該非判定が必要です。

5-3 キャッチオール規制の対象品目(16項:非該当品)

別表第1の1〜15項(3の2項含む)のいずれにも該当しない貨物は「リスト非該当品」です。このうち食料・木材等を除く工業製品は16項として、大量破壊兵器等への転用懸念があれば許可が必要となるキャッチオール規制の確認対象になります。16項は法令上、(一)特定機械・計測機器等(二)HS分類による一般工業品の2区分に分かれています。

区分内容(法令規定)
16項(一)
特定の機械・
計測機器等
1〜15項に掲げるものを除く、以下の貨物であって経済産業省令で定めるもの:

1 レーザー・超音波・放電・電気化学・電子ビーム・イオンビーム・プラズマアークを使用する加工機械およびウォータージェット切断機械
2 金属加工用のマシニングセンター、ユニットコンストラクションマシン、マルチステーショントランスファーマシン
3 旋盤
4 金属用のボール盤、中ぐり盤、フライス盤、ねじ切り盤、ねじ立て盤
5 研削盤、ホーニング盤、ラップ盤、研磨盤その他仕上げ用加工機械
6 平削り盤、形削り盤、立削り盤、ブローチ盤、歯切り盤、歯車研削盤、歯車仕上盤、金切り盤、切断機その他加工機械
7 レーダー、航行用無線機器および無線遠隔制御機器
8 集積回路
9 航空機並びに宇宙飛行体および打上げ用ロケット並びにこれらの部分品
10 羅針盤その他航行用機器
11 物理分析用・化学分析用の機器、粘度・多孔度・膨張・表面張力等の測定・検査用機器、熱・音・光の量の測定・検査用機器およびミクロトーム
12 オシロスコープ、スペクトラムアナライザーその他電気的量の測定・検査用機器、およびアルファ線・ベータ線・ガンマ線・エックス線・宇宙線その他電離放射線の測定・検出用機器
16項(二)
HS分類による
一般工業品
関税定率法別表の第25〜40類、第54〜59類、第63類、第68〜93類または第95類に該当する貨物。ただし(一)および1〜15項に掲げるものを除く。

各類の主な内容と例示:
内容例示
第25〜27類鉱物性生産品塩・硫黄・石灰・セメント、鉱石・スラグ、石油・石炭・天然ガス
第28〜40類化学品・プラスチック・ゴム等無機化学品・有機化学品・医薬品・農薬・肥料・塗料・石けん・火薬・写真用品・プラスチック製品・ゴム製品
第54〜59類人造繊維・特殊織物等ナイロン・ポリエステル等の人造繊維糸・織物、フェルト・不織布・ロープ、工業用コーティング織物
第63類紡織用繊維の その他製品毛布・寝具・テント・帆・防水布・工業用雑巾・中古衣類
第68〜70類石材・陶磁器・ガラス石材製品・セメント製品・陶磁器・ガラス製品・ガラス繊維
第71類貴金属・宝飾品天然・養殖真珠、ダイヤモンド・ルビー等の宝石、金・銀・プラチナ製品、身辺用模造細貨類
第72〜83類卑金属(鉄・銅・アルミ等)及びその製品鉄鋼・ステンレス鋼・銅・アルミニウム・鉛・亜鉛の板材・管材・棒材・線材、金属製工具・刃物・ボルト・容器・ポンプ・バルブ
第84〜85類機械類・電気機器汎用ポンプ・コンプレッサー・冷凍機・印刷機・農業機械・建設機械・電動機・変圧器・蓄電池・照明機器・家電製品(ただし高スペックのものは1〜15項に該当する場合あり)
第86〜89類輸送機器鉄道車両・一般自動車・自動車部品・二輪車・自転車・船舶(民間用一般船舶)
第90〜92類精密機器・時計・楽器汎用カメラ・顕微鏡・眼鏡・医療用機器(汎用品)・時計・ピアノ・ギター(ただし高精度のものは15項等に該当する場合あり)
第93類武器(輸出令1の項に 非該当の一般品)狩猟用・競技用の一般的な銃砲(ただし軍用・規制対象スペックは1の項に該当)、刀剣類の民間品
第95類玩具・遊戯用具・ 運動用品玩具・ゲーム機・スポーツ用品・釣り具・遊園地用機器

※食料・木材等(第1〜24類、第41〜53類、第44〜49類等)はキャッチオール規制の対象外。
ポイント:(一)と(二)の関係

(一)は精密な工作機械・計測機器・集積回路・航空機部品等の特定品目で、省令でさらに詳細なスペックが定められています。(二)はHSコードで指定される工業製品全般です。なお、(一)に該当する品目は(二)から除かれており、重複はありません。

(一)の品目は本来、関税定率法上は(二)と同じ類(第84類・第85類・第90類等)に属しています。たとえば旋盤・研削盤は第84類(機械類)、航行用無線機器・集積回路は第85類(電気機器)、オシロスコープは第90類(精密機器)にそれぞれ該当します。これらはいずれも(二)の対象類に含まれますが、軍事転用リスクが高い特定スペックのものを(一)として引き出し、省令でスペック管理しています。つまり(一)は(二)の中から特定スペックのものを「引き出した」存在であり、省令の基準を下回る汎用品は(二)として扱われます。

(一)と(二)をあえて区分した理由:
まず大前提として、(一)も(二)も、WMDキャッチオール規制と通常兵器キャッチオール規制の両方が適用されます。(一)がWMD用、(二)が通常兵器用、という区分ではありません。

では何のための区分かというと、2025年10月改正で「通常兵器キャッチオール規制の客観要件(用途・需要者の確認義務)を一般国向けに新設する」にあたり、すべての工業製品に課すと輸出者の負担が膨大になるため、安全保障上の懸念が特に高い品目(特定品目)だけに絞って課すことにしたのです。

その結果、仕向地が一般国(中国・ロシア・イラン等)の場合、(一)と(二)で以下のような違いが生じます。
(一)特定品目(工作機械・集積回路・レーダー等):通常兵器キャッチオールの客観要件+インフォーム要件
(二)工業製品全般(鉄鋼・化学品・自動車部品等):インフォーム要件のみ(改正前から変わらず)

仕向地16項(一)特定品目16項(二)工業製品全般
グループA(27か国)インフォーム要件のみ
(迂回輸出の懸念がある場合に限定)
インフォーム要件のみ
(迂回輸出の懸念がある場合に限定)
武器禁輸国客観要件+インフォーム要件客観要件+インフォーム要件
一般国(中国・ロシア等)客観要件+インフォーム要件
(2025年10月〜新たに追加)
インフォーム要件のみ
注意:「リスト非該当」でもキャッチオール規制の確認は必須

16項(一)・(二)に該当する貨物は、そのすべてが自動的に許可必要というわけではありません。ただし輸出者は必ずキャッチオール規制の確認(用途・需要者のチェック)を行う義務があります。確認の結果、用途要件・需要者要件・インフォーム要件のいずれにも該当しなければ許可は不要です。「リスト規制に非該当だから確認しなくてよい」という判断は誤りです。詳細は第1章1-5節・第8章を参照。

整理:16項品目の許可の要否

許可が必要になるのは、次の①〜③のいずれかに当てはまる場合のみです。

 要件わかりやすく言うと詳細
インフォーム要件 「国から通知が来た場合」 経済産業大臣から「この取引は許可申請が必要」という通知(インフォーム通知)を受け取った場合。通知が来たら必ず申請が必要。
客観要件
(用途・需要者)
「危ない使われ方をしそうだと自分で気づいた場合」 通知がなくても、輸出者自身が調査を通じて「兵器開発に使われそう」「怪しい相手先だ」と判断できる場合。用途と需要者の両面から確認する。
外国ユーザーリスト(EUL)掲載先への輸出 「経産省の要注意リストに載っている相手への輸出」 経済産業省が公表する「外国ユーザーリスト」に掲載された企業・機関が需要者の場合。「明らかに兵器に使われない」と言える場合を除き許可申請が必要。

①〜③のいずれにも当てはまらない通常の商取引であれば許可は不要です。鉄鋼・化学品・電気機器・自動車部品等を普通の民間企業に輸出する場合は、16項に該当していても許可申請は不要です。

5-4 ワッセナー・アレンジメントのリスト体系と国内法令の対応

5〜15項のリスト規制品目の多くはワッセナー・アレンジメント(WA)の合意に基づいています。WAは規制品目を3段階のリストに区分しており、その機微度に応じて国内法令上の扱いが異なります。

WAのリスト区分概要国内法令上の対応
基本リスト
(Dual-Use List)
9カテゴリーに分類された汎用品・技術の基本的なリスト。輸出管理の中核をなす。 輸出令別表第1の5〜14項(技術は外為令別表の対応項)
機微品目リスト
(Sensitive List)
基本リストの中でも特に軍事転用リスクが高い品目を抜粋したリスト。許可申請時の提出書類が増える。 貨物:輸出令別表第3の3(告示貨物
技術:提出書類通達の別表2の付表1(付表技術)
特に機微な品目リスト
(Very Sensitive List)
機微品目リストの中でも最も規制が厳しい品目。仕向地・需要者の制約が一段と厳しくなる。 輸出令別表第1の15項
WAのカテゴリー番号と輸出令別表第1の項番号の対応

WAの汎用品リストは9つのカテゴリー(Category 1〜9)に分かれており、それぞれ輸出令別表第1の項番号に対応しています。該非判定やSTC試験においてもこの対応関係は重要です。

WAカテゴリー内容輸出令別表第1の対応項
Category 1Advanced Materials(先端材料)5項
Category 2Materials Processing(材料加工)6項
Category 3Electronics(エレクトロニクス)7項
Category 4Computers(コンピュータ)8項
Category 5 Part 1Telecommunications(通信)9項
Category 5 Part 2Information Security(情報セキュリティ)9項
Category 6Sensors and "Lasers"(センサ・レーザー)10項
Category 7Navigation and Avionics(航法・アビオニクス)11項
Category 8Marine(海洋関連)12項
Category 9Aerospace and Propulsion(航空宇宙・推進)13項
Munitions List軍需品リスト(武器等)1項・14項
Very Sensitive List特に機微な品目リスト15項

※ WAの合意内容は毎年更新されます。該非判定にあたっては、WAのリスト原文(英文)ではなく、最新の貨物等省令・輸出令を参照してください。

整理:Sensitive Listと付表の対応関係

Sensitive Listが国内法令のどこに反映されているかは混同しやすいポイントです。

WAのリスト区分貨物の場合技術の場合
Sensitive List(SL)輸出令別表第3の3(告示貨物提出書類通達 別表2 付表1(付表技術)
Very Sensitive List(VSL)輸出令別表第1の15項

告示貨物・付表技術の主な例:
告示貨物・付表技術は5〜13項の中でも特に軍事転用リスクが高いとされる品目です。以下のようなものが該当します。

項番告示貨物・付表技術の例
5項(先端材料)特定の炭素繊維・アラミド繊維、特殊セラミックス(炭化ケイ素等)、超電導材料
6項(材料加工)特定精度以上のNC旋盤・研削盤、等圧プレス(HIP)装置、電子ビーム加工装置
7項(エレクトロニクス)特定スペック以上の高速集積回路・AD変換器、高周波電力増幅器
8項(コンピュータ)特定演算性能以上の高性能コンピュータ
9項(通信・情報セキュリティ)特定鍵長以上の暗号装置、拡散スペクトラム通信装置
10項(センサ・レーザー)合成開口レーダー(SAR)、高出力レーザー、赤外線撮像装置
11項(航法関連)高精度慣性航法装置(INS)、特定精度以上のジャイロスコープ
12項(海洋関連)特定深度以上の潜水装置、高性能ソナー
13項(推進装置)特定推力以上のガスタービンエンジン、固体ロケットエンジン

※告示貨物・付表技術に該当すると、少額特例の上限が100万円から5万円に引き下げられるほか、許可申請先が経済産業局ではなく本省(安全保障貿易審査課)となるなど、審査が厳格化されます。少額特例の詳細は→ 第7章 7-11節参照。

5-5 技術管理強化のための官民対話スキーム(重要管理対象技術の事前報告制度)

2024年12月30日から運用が開始された、キャッチオール規制を補完する新たな技術管理の仕組みです。一度流出すると管理が困難な「技術」の特性を踏まえ、安全保障上リスクの高い重要技術の対外移転について、契約締結前に経済産業大臣への事前報告を義務付けています。

項目内容
根拠法令外為法第55条の8 → 外為令第18条の8 → 貿易外省令第10条第3項 → 報告告示(令和6年経済産業省告示第178号)
対象技術外為令別表の16項(キャッチオール規制対象)に該当する技術のうち、報告告示で指定された「重要管理対象技術」。半導体・電子部品等の10分野を中心に指定(令和7年改正で追加あり)。
報告が必要な取引の要件以下の4要件をすべて満たす場合:
① グループA(旧ホワイト国)以外の外国への技術提供取引であること
② 提供技術が報告告示で指定された重要管理対象技術に該当すること
③ 核兵器等または通常兵器の開発等に利用されるおそれが少ないことが明らかでないこと
④ 適用除外(公知技術・基礎科学研究・最低限技術等)に該当しないこと
報告のタイミング対象取引に係る契約を締結する前に報告書を経済産業大臣に提出
報告後の流れ原則として報告から30日以内に経済産業省が対応を判断。官民対話を経て技術管理策を協議。懸念が高い場合はインフォーム(許可申請を求める通知)が発出される場合がある。
報告漏れの場合外為法に基づく指導・助言・改善命令。悪質な場合は罰則の適用もあり。
キャッチオール規制との違い

キャッチオール規制(16項)は「輸出しようとする時点」で許可の要否を判断する制度です。一方、本制度は契約締結前の事前報告を義務付けることで、取引が固まる前の段階から官民が情報共有・対話を行い、技術流出を未然に防ぐことを目的としています。技術移転を止めることが目的ではなく、適切な技術管理の徹底が目的です。

注意:主な対象技術分野(報告告示・令和6年告示第178号、令和7年改正含む)

告示で指定された重要管理対象技術の主な分野は以下の通りです(いずれも設計・製造に係る技術)。

分類技術例
電子部品積層セラミックコンデンサ(MLCC)、弾性表面波フィルタ(SAWフィルタ)・バルク弾性波フィルタ(BAWフィルタ)、回路基板用電解銅箔、チタン酸バリウム粉体の合成、磁気抵抗センサー素子 など
炭素・セラミック繊維炭素繊維・炭化ケイ素(SiC)繊維のプリカーサー製造・焼成
半導体製造関連248nm以下波長対応の半導体リソグラフィ用レジスト、EUV(極端紫外)露光用非鉄金属ターゲット材の製造
電子顕微鏡走査型電子顕微鏡(SEM)・透過型電子顕微鏡(TEM)
金属製品スポンジチタン(マグネシウム還元法)
蓄電池リチウムイオン電池の正・負極集電体バインダー、硫化物固体電解質、セパレータ製造用二軸押出機 など

本制度は2024年12月施行後も対象技術の追加が進んでいます(令和7年改正で対象技術追加、令和8年1月14日施行)。これらの分野を扱う企業は経産省の最新の報告告示を定期的に確認することが必要です。

第6章

該非判定

輸出しようとする貨物・技術が規制品目(別表第1の1〜15項)に該当するかどうかを判断する作業です。
貨物・技術の確認
別表第1との照合
貨物等省令の性能確認
該当/非該当の判定
判定の注意点

・技術部門・法務部門が連携して行うことが望ましい

・判定結果と根拠は書面で記録・保管する(5年間)

・不明な場合は経済産業省またはCISTECに事前相談

注意

「公知の技術」は原則規制対象外ですが、判断は慎重に行う必要があります。「最低限技術の例外」(特定機器の操作・保守のみに必要な技術)も条件付きで規制対象外となります。

第7章

許可申請

規制対象となる輸出・技術提供・仲介貿易取引を行う者は、原則として経済産業大臣の許可を取得しなければなりません。

7-1 基本原則

項目内容
許可権者経済産業大臣(経済産業省安全保障貿易管理課等が担当)
申請者輸出者本人・役務提供者本人・仲介取引を行う者本人。代理申請も可だが許可名義は本人
申請先経済産業省(電子申請システムまたは管轄の経済産業局への書面提出)
重要:許可は「行為者自身」が取得する

商社・代理店が間に入る場合も、最終的に行為を行う者が許可を保有している必要があります。通関業者等の代理申請は可能ですが、許可名義は必ず輸出者本人です。

7-2 個別許可

個別許可輸出許可(貨物)/役務取引許可(技術)
申請者輸出者本人(通関業者・商社等の代理申請も可) 申請先経済産業省(電子申請または管轄の経済産業局へ書面提出) 有効期限原則 6か月(許可証記載の期限内。事情によっては延長申請可) 対象1件ごとの輸出取引・技術提供。包括許可対象外の取引に適用される原則的な形態 審査期間通常2〜4週間。品目・仕向地・需要者によっては数か月かかる場合もある

主な申請書類

  • 輸出許可申請書(様式第1号)または役務取引等許可申請書
  • 貨物の仕様書・カタログ・該非判定書
  • 取引関係書類(契約書・注文書・インボイス等)
  • エンドユーザー証明書(需要者・用途を証明する書類)
  • その他経済産業省が求める補足資料

7-3 包括許可(4種類)の概要

種類主な対象取引有効期限ICP要件
一般包括ホワイト国向け特定品目の繰り返し輸出3年(更新可)基本的な体制整備
特別一般包括一般包括より広範な品目・地域をカバー3年(更新可)充実したICP(経産省確認)
特定包括特定の需要者・品目・仕向地の組み合わせ3年(更新可)一定の体制整備
役務(特定)包括技術提供(役務取引)をまとめて許可3年(更新可)基本的な体制整備

7-4 一般包括許可

一般包括許可繰り返し輸出向けの基本的な包括許可
申請者輸出者本人(自社の輸出管理責任者が申請) 申請先経済産業省(電子申請または書面) 有効期限3年間(満了前に更新申請が必要。失効すると個別許可が必要となる) 対象地域原則としてホワイト国(グループA:42か国)向け 対象品目輸出令別表第1の5〜15項(汎用品)のうち告示で定められた品目

取得要件(主なもの)

  • 社内管理規程(輸出管理規程)の整備・運用
  • 輸出管理責任者の選任
  • 従業員への教育・訓練の実施
  • 該非判定・記録保管の実施

7-5 特別一般包括許可

特別一般包括許可高度なICP整備企業向けの広範な包括許可
申請者輸出者本人(充実したICPを持つ企業が申請) 申請先経済産業省(事前確認・審査あり) 有効期限3年間(更新時も改めてICP確認が行われる) 対象一般包括許可より広範な地域・品目(グループB向けを含む一部品目も対象)

取得要件(高水準)

  • 充実したICP:経営陣のコミットメント・専任管理組織・詳細な社内規程
  • 内部監査の定期実施と記録
  • 取引審査(用途・需要者確認)の厳格な実施体制
  • 経済産業省による立入検査・ヒアリングへの対応実績
  • 過去の法令違反がないこと
メリット

通常の企業より広い範囲の品目・仕向地について個別許可なしに輸出できるため、グローバルに展開する製造業・商社には特に有効です。

インフォームによる失効条件

特別一般包括許可を使用して輸出する場合でも、一般包括許可と同様に、経済産業大臣から核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある旨の通知(インフォーム通知)を受けた取引については、当該包括許可が失効し、個別許可の取得が必要となります(7-13節参照)。

ICP(輸出管理内部規程)とは

ICP(Internal Compliance Program)とは、企業が外為法等の安全保障貿易管理法令を自律的に遵守するために整備する社内管理の仕組みの総称です。管理責任者の選任・社内規程の整備・従業員教育・内部監査・記録保管などが主な要素です。特別一般包括許可等の取得には経産省へのICP届出と実施状況調査(立入検査等)の受検が必要となります。詳細は第9章で解説しています。

7-6 特定包括許可

特定包括許可特定の需要者・品目・仕向地の組み合わせに対する包括許可
申請者輸出者本人 申請先経済産業省 有効期限3年間(更新可) 対象許可申請書に記載した「特定の需要者+特定の品目+特定の仕向地」の組み合わせのみ使用可能 活用場面海外グループ会社・主要取引先への継続的な輸出、定期的なメンテナンス部品の供給など
ポイント

取引先や品目が変わった場合は改めて申請が必要です。「誰に・何を・どの国へ」が固定された許可です。

7-7 役務(特定)包括許可

役務包括許可技術提供(役務取引)をまとめて許可する包括許可
申請者技術を提供する者(役務提供者)本人 申請先経済産業省 有効期限3年間(更新可) 対象規制技術の非居住者への提供(みなし輸出含む)、または特定外国人等への提供 種類役務一般包括許可(幅広い取引向け)と役務特定包括許可(特定の相手・技術向け)がある
注意

日本国内での非居住者への技術説明や特定外国人等への技術提供にも適用されます。研究機関・大学・製造業など外国人技術者と日常的に関わる組織には特に重要な許可です。

7-8 仲介貿易取引許可重要

「仲介貿易取引」とは、日本の居住者が、外国相互間の貨物の売買・貸借の媒介・代理・受託・取次等を行う取引のことです。貨物が日本を経由しない場合でも、一定の条件下では外為法上の許可が必要となります。

外国A(輸出国)
売主
貨物の直接移動
外国B(輸入国)
買主
↕ 取引の媒介・契約・代金決済
仲介貿易取引許可外国相互間の貨物取引の仲介に対する許可
申請者仲介取引を行う日本の居住者本人(商社・貿易会社・個人等) 申請先経済産業省(電子申請または管轄の経済産業局へ書面提出) 有効期限原則 6か月(個別許可と同様。許可証記載の期限内に取引を完了させること) 根拠条文外為法第25条第2項、外国為替令第17条の2

許可が必要となる主なケース

ケース規制の根拠
外国間で武器・大量破壊兵器関連品目(1〜4項)の取引を仲介する場合原則として常に許可が必要(全地域が対象)
外国間でリスト規制品目(5〜15項相当)の取引を仲介し、懸念国・懸念需要者が関与する場合キャッチオール的観点から許可が必要な場合がある
経済産業大臣からインフォーム通知を受けた取引を仲介する場合インフォームにより許可申請義務が発生

申請フロー

1
仲介対象貨物の該非判定仲介する貨物が1〜15項相当品目かどうかを確認。貨物が日本に来なくても、外国のサプライヤーから仕様書等を入手して判定を行う。
2
需要者・用途の確認最終需要者がEULに掲載されていないか確認。レッドフラッグに該当しないかを審査する。
3
許可要否の判断1〜4項(3の2項含む)相当品目は原則許可必要。5〜15項相当品目は仕向地・需要者の状況によって判断。
4
仲介貿易取引許可申請書の提出売主・買主・仕向地・品目・数量・金額等を明確に記載して経済産業省へ提出。
5
審査・許可証の受領許可証が交付される。有効期限(原則6か月)内に仲介取引を完了させること。
6
書類の保管(5年間)許可証・申請書類・該非判定書・エンドユーザー証明書等を取引完了後5年間保管する義務がある。
重要:「日本を通らないから許可不要」は誤り

貨物が日本を一切経由しなくても、日本の居住者が仲介した時点で規制対象となります。「うちは商社だから輸出はしていない」という誤解が違反につながる典型的なケースです。社内の輸出管理規程に「仲介貿易取引」の手続きが明確に定められているかを確認してください。

7-9 個別輸出許可申請の流れ

1
該非判定の実施輸出する貨物・技術が輸出令別表第1の1〜15項に該当するか確認。
2
包括許可の適用可否を確認既に保有している包括許可で対応できるか確認。可能であれば個別申請不要。
3
申請書類の作成・提出輸出許可申請書(様式第1号)、仕様書、該非判定書、エンドユーザー証明書等を準備し経済産業省へ提出。
4
審査(用途・需要者確認)通常2〜4週間。補足資料の提出を求められることがある。
5
輸出許可証の受領・通関税関に許可証を提示して輸出申告を行う。有効期限(原則6か月)内に輸出を完了させること。
6
書類の保管(5年間)許可証・申請書類・該非判定書等を輸出後5年間保管する義務がある。

7-10 許可種別ごとの有効期限まとめ

許可の種類有効期限注意事項
個別輸出許可・役務取引許可原則6か月期限内に輸出・提供できなかった場合は再申請が必要
仲介貿易取引許可原則6か月期限内に仲介取引を完了させること
一般包括許可3年間満了前に更新申請。失念すると個別許可が必要となる
特別一般包括許可3年間更新時に改めてICPの確認審査あり
特定包括許可3年間条件変更がある場合は変更申請または再申請
役務(特定)包括許可3年間技術の範囲・相手先が変わった場合は変更・再申請
重要:許可証の期限切れ・条件外使用は違反

有効期限が切れた許可証の使用、または許可証に記載された品目・数量・仕向地・需要者と異なる取引への使用は、無許可輸出・無許可仲介として外為法違反となります。

7-11 許可が不要となる主な例外

リスト規制に該当する貨物や技術であっても、一定の条件を満たす場合は経済産業大臣の許可が不要となる「特例」が設けられています。ただし、特例の適用範囲は品目によって異なります。特に少額特例は5〜13項・15項のみが対象であり、1〜4項(武器・核・化学・生物・毒素兵器・ミサイル関連)および14項は少額特例の対象外となります。また、特例を適用した場合でも税関への輸出申告は別途必要です。

A 貨物の輸出における許可不要の特例(輸出令第4条第1項)

① 少額特例輸出令第4条第1項第5号・別表第3の3

規制対象貨物であっても、1回の輸出契約ごとの総価額が一定額以下の場合に許可が不要となる特例です。

対象貨物適用される総価額の上限
5〜13項のうち別表第3の3(告示)に定める貨物5万円以下
15項(その他の軍需品等)の貨物5万円以下
5〜13項のうち告示以外の貨物100万円以下
1〜4項・14項の貨物
(武器・核・化学兵器・ミサイル・毒素兵器・農薬等)
適用なし(対象外)
価額にかかわらず個別許可申請が必要
少額特例の対象となる項・ならない項

少額特例は5〜13項と15項のみが対象です(輸出令第4条第1項第5号)。1〜4項(武器・核・化学・生物・毒素兵器・ミサイル関連)および14項(農薬等)は対象外であり、価額にかかわらず個別の輸出許可申請が必要です。

重要:懸念国(別表第4の地域)向けは少額特例が一切使えない

仕向地が輸出令別表第4の地域(イラン・イラク・北朝鮮)の場合は、少額特例(無償特例も含む)は一切適用できません。懸念3か国向けには価額にかかわらず必ず個別許可申請が必要です。

計算方法の注意点

総価額は「1回の輸出契約ごと」に、輸出令別表第1の各項のカッコごとに区分した合計額で判断します。複数回に分割して船積みしても「1契約」として合算されます。また外貨建ての場合は日本銀行公表の換算レートを使用します。

重要:この特例が使えない場合

大量破壊兵器等の開発等に用いられる場合(キャッチオール規制に引っかかる場合)には少額特例は適用できません。また少額特例を適用した貨物には包括許可は適用されません(そもそも許可義務がないため)。

② 無償特例(返送・修理等)輸出令第4条第1項第2号ホ・ヘ

「無償で輸入したものを無償で輸出(返送)する場合」および「無償で輸出したものが無償で返送されてくる場合」を対象とする特例です。

類型具体例主な条件
修理・返品のための返送日本から輸出した製品が故障し、修理のため返送→修理後に再輸出修理後も仕様が輸出時から変更ないこと(1対1交換を含む)。有償修理でも可
博覧会・展示会出品品の返送海外から日本の博覧会に出品された貨物を、終了後に出品者へ返送博覧会等終了後の返送であること
一時輸入品の返送通関手帳(ATA carnet)で輸入した貨物の返送通関手帳に基づいて輸出すること
一時入国者の携帯品一時的に入国・出国する者が携帯する本人使用の特定貨物本人使用と認められるものであること
重要:仕向地による制限

無償特例にも仕向地による制限があります。北朝鮮向けは無償特例を含む一切の特例が適用できません。またイラン・イラクを仕向地とする場合も無償特例は原則適用できません。懸念3か国(別表第4の地域)への輸出は、無償・少額を問わず必ず個別許可申請が必要です。

③ 暗号特例輸出令第4条第1項第6号

8の項(コンピュータ)または9の項(通信関連)に該当する暗号製品であっても、以下の3条件すべてを満たす場合は許可不要です。

ア)市販品で誰でも購入可能:販売店の在庫から制限なく入手できるもの(インターネット販売含む)

イ)暗号機能をユーザーが変更できない:使用者による改変が不可能な設計

ウ)技術支援が不要:使用に際してメーカー・販売店の技術支援なしで使用可能

注意

ホワイト国以外への輸出については、用途・相手先の確認によっては「おそれあり」と判断され、暗号特例が適用できない場合があります。キャッチオール規制の確認は別途必要です。

④ その他の特例(輸出令第4条第1項各号)
特例の種類内容
船用品・機用品船舶・航空機において自己の用に供するための燃料・綱・錨・食料等
航空機の機上安全装備航空機の発着等を安全にするための機上装備貨物であって修理・取替えを要するもの
国際機関・大使館向け公用貨物国際機関が条約等の免除規定に基づいて送付する貨物、日本国大使館等への公用貨物
仮陸揚貨物寄港した船舶・航空機から一時的に陸揚げし、修繕等を行った後に再積みする貨物

B 役務(技術提供)における許可不要の特例(貿易外省令第9条第2項)

技術提供についての例外は、輸出令とは別に「貿易関係貿易外取引等に関する省令(貿易外省令)第9条第2項」に定められています。該当する場合は、リスト規制技術であっても許可不要です。

① 公知技術の提供(第9号)最も広く使われる例外

不特定多数の者がアクセスできる公知の技術は、提供に許可が不要です。以下のいずれかに該当する必要があります。

公知の形態具体例
既に不特定多数に公開されている技術新聞・書籍・雑誌・カタログ・インターネット上のファイル等で公開されているもの
不特定多数が入手可能な媒体に掲載学会誌・公開特許情報・公開シンポジウムの議事録等
公開の場で聴講可能なもの工場見学コース・講演会・展示会等において不特定多数が入手または聴講可能なもの
オープンソースソースコードが公開されているプログラム
公知にするための提供学会発表用原稿の送付、雑誌への投稿等、不特定多数が閲覧可能とすることを目的とする取引
「公知」の落とし穴

「特定の者に提供することを目的として公知とする取引」は例外に該当しません。つまり、特定の一社に向けて提供することを目的として公知にするような行為は例外の対象外です。また、公知技術であっても、それを組み合わせた応用技術が規制対象となる場合があります。

② 基礎科学分野の研究活動(第10号)

「自然科学の分野における現象に関する原理の究明を主目的とした研究活動であって、理論的または実験的方法により行うものであり、特定の製品の設計または製造を目的としないもの」での技術提供は許可不要です。

注意:産学連携研究には要注意

企業との共同研究・受託研究・産学連携プロジェクトは「特定の製品の設計・製造を目的としない」とはいえない場合が多く、この例外に該当しないケースがほとんどです。大学・研究機関でも産学連携案件は慎重に確認が必要です。

③ 最低限技術の提供(第12・13号)最も頻繁に問われる例外

貨物やプログラムの輸出に付随して提供される、その使用に係る最低限の技術は許可不要です。

類型根拠号内容条件
貨物の輸出に付随する技術第12号貨物の据付・操作・保守・修理のための必要最小限の技術プログラムおよび告示で定めるものを除く
プログラム提供に付随する技術第13号プログラムのインストール・操作・保守・修理のための必要最小限の技術プログラムおよび告示で定めるものを除く
「必要最小限」の解釈に注意

「使い方の説明」に留まるものは許可不要ですが、製品の設計・製造に踏み込む技術提供は「必要最小限」を超えると判断されます。顧客への技術サポート・カスタマイズ支援等では特に慎重な判断が必要です。

④ 特許出願・工業所有権出願のための技術提供(第11号)

外国での特許・実用新案・意匠・商標の出願または登録を行うために必要な最小限の技術を提供する取引は、許可が不要です。国際標準の策定のための国際会議出席・提案等においても同様です。

⑤ 市販プログラムの特例(第14・15号)

貨物と同時に提供する、その貨物を使用するために特別に設計されたプログラムであって、ソースコードが提供されないものは許可不要です(告示で定めるものを除く)。また、一般消費者向けに市販されているプログラムで、一定の条件を満たすものも許可不要です。

大前提:特例の適用にも慎重な確認が必要

特例を適用した場合でも、該非判定は必ず行う必要があります。「特例に該当するから該非判定は不要」という判断は誤りです。また、特例の適用が誤っていた場合は外為法違反となります。適用可否について不明な場合は、経済産業省またはCISTECに事前相談することを強く推奨します。

補足:16項(非該当技術)を口頭で提供する場合

外為令別表の16項に該当する技術(リスト規制非該当技術、いわゆるキャッチオール規制の対象技術)を口頭で提供する場合は、役務取引許可は不要です。これは「口頭による技術提供」が役務取引規制の対象とならないためです。

ただし以下の点に注意が必要です。

提供手段許可の要否
口頭(対面)での説明・質疑応答許可不要(ただし下記の例外あり)
電話・テレビ会議等(公衆電気通信網使用)許可必要(通信手段を使用するため規制対象)
メール・FAX・図面等の送付許可必要

仕向地とインフォーム要件について:
口頭提供が「許可不要」なのは仕向地に関わらず同様ですが、経済産業大臣からインフォーム通知を受けた場合は口頭提供であっても許可が必要です。インフォーム通知は書面で届くため、通知を受けていない通常の取引では口頭提供は許可不要です。

※なお、リスト規制(1〜15項)に該当する技術の場合は、口頭提供であっても許可が必要です。この例外はあくまで16項(キャッチオール規制対象技術)に限られます。

7-12 海外支店・海外子会社が取引する場合の注意点重要

グローバルに展開する企業では、海外の支店・子会社が現地で輸出取引を行う場合があります。この場合、外為法上の「輸出者」が誰かによって、許可取得の義務者・使用できる包括許可の範囲が変わります。

7-12-1 海外支店の場合

海外支店は日本本社の一部(同一法人)です。ただし、「輸出者」は実際に輸出を行う主体となります。海外支店が現地から輸出する場合、その国の輸出法令が適用されます。一方、日本本社が契約主体で日本から輸出する場合は外為法が適用されます。

パターン輸出者適用される法令注意点
日本本社が契約・日本から輸出日本本社日本の外為法本社が保有する包括許可を使用可能
海外支店が現地で契約・現地から輸出海外支店(現地法人扱い)現地国の輸出法令日本の包括許可は原則使用不可。現地法令に従う
日本本社が契約・海外支店が通関手続き 日本本社(契約・許可名義) 日本の外為法+現地国の輸出法令(双方) 日本本社が外為法上の輸出許可を取得する必要があるのに加え、海外支店が実際に輸出行為を行う現地においても現地国の輸出法令の規制を受ける。米国など輸出管理法令が厳格な国では特に注意が必要。
重要:「日本本社が許可を取ったから大丈夫」は不十分

日本本社が外為法上の輸出許可(一般包括許可等)を取得していても、海外支店が実際に輸出する国の法令(EAR等)が別途適用されます。例えば米国のEARは、米国から日本を経由して輸出される場合にも域外適用されることがあります。日本の許可と現地法令の許可の双方が必要なケースを見落とさないよう、取引ごとに確認することが重要です。

7-12-2 海外子会社の場合

海外子会社は日本本社とは別の法人です。海外子会社が現地から輸出する行為は、原則として日本の外為法の適用対象外となります(現地国の法令が適用)。ただし以下の点に注意が必要です。

海外子会社取引における主な注意点

① 日本本社から海外子会社への輸出は外為法の規制対象:日本本社が海外子会社に規制品を輸出する際は、たとえグループ内取引であっても許可が必要(「親会社だから不要」は誤り)

② 技術の無形提供も規制対象:設計図・仕様書・ソフトウェア等を海外子会社に提供する行為も役務取引規制の対象となる

③ 米国EARの域外管轄:米国原産部品を含む製品を海外子会社が第三国へ再輸出する場合、日本の外為法に加えてEARの許可が必要になる場合がある(第11章参照)

④ ICP(内部管理体制)の子会社への指導義務:特定重要貨物等の輸出等に関わる業務を担う海外子会社がある場合、日本本社は当該子会社に対して安全保障貿易管理に係る指導等を行う義務がある(輸出者等遵守基準)

典型的な誤解:「グループ内取引は許可不要」

「自社グループ内への輸出だから問題ない」「海外子会社は自社の一部だから許可不要」という誤解が違反につながる典型例です。外為法では、たとえグループ内取引であっても規制品の輸出・技術提供には許可が必要です。また、海外子会社が受け取った規制品を第三者に転売・転用することも、日本本社の責任問題につながりえます。

7-12-3 特定子会社包括許可

包括許可取扱要領には「特定子会社包括許可」という制度が設けられています。日本本社が、議決権の50%超を保有する海外子会社向けに、一定の品目を繰り返し輸出する場合、特定子会社包括許可を取得することで手続きを簡素化できます。

項目内容
対象申請者が議決権の50%超を保有する海外子会社(孫会社は原則対象外)
有効期限3年間(更新可)
取得要件一般包括許可の取得要件を満たすこと、子会社の管理体制の確認
メリット特定の子会社向けの繰り返し輸出について個別許可不要となる

7-13 包括許可取扱要領 別表の軍エンドユーザー条件(別表1の(10)(1)表1・別表3の(12)(表1))の解説

一般包括許可には別表1の条件が、特別一般包括許可には別表3の条件が付されています。「軍・軍関係機関等を需要者とする取引」に関する条件は、一般包括許可では別表1の(10)(1)表1、特別一般包括許可では別表3の(12)(表1)に規定されています。

一般包括輸出許可には「条件」が付されており、その中でも実務上特に重要なのが「軍・軍関係機関等を需要者とする取引」に関する条件(別表3の10(1))です。この条件では、軍・軍関係機関等への輸出について、状況に応じて包括許可の「失効」「届出」「報告」のいずれかの対応が義務付けられています。

「軍若しくは軍関係機関又はこれらに類する機関」とは

軍隊または国防・治安の維持・安全保障のために組織された機関(政府機関に準じるものを含む)を指します。民間企業であっても、軍や国防省と深く連携している場合はこれに類する機関と判断される場合があります。

【表1:用途×仕向地による取扱い一覧】

この表は、「核兵器等の開発等」と「その他の軍事用途」を2列に分けて規定しています。同じ状況でも用途の種類によって取扱いが異なる場合があるため、この区別が重要です。

前提:軍・軍関係機関が需要者の場合にのみ適用

この表は「軍若しくは軍関係機関若しくはこれらに類する機関を需要者とする場合」に適用されます。需要者が純粋な民間企業の場合はこの表の対象外です。

状況の区分仕向地(提供地)特別一般包括許可の取扱い(注1)
核兵器等の開発等その他の軍事用途
用いられる(利用される)場合 輸出令別表第3に掲げる地域(グループA) 失効 報告
上記以外(グループA以外) 失効 失効
用いられる(利用される)おそれがある場合 輸出令別表第3に掲げる地域(グループA) 失効(注2) ―(該当なし)
上記以外(グループA以外) 失効 ―(該当なし)
用いられる(利用される)疑いがある場合 輸出令別表第3に掲げる地域(グループA) 届出 報告
上記以外(グループA以外) 届出 届出
いずれにも該当しない場合
(懸念なし・軍が需要者)
輸出令別表第3に掲げる地域(グループA) 報告
上記以外(グループA以外) 届出
「―」(該当なし)の意味

「おそれがある場合」の「その他の軍事用途」欄が存在しない理由は、「おそれがある場合」の概念が核兵器等の開発等に限定された概念だからです(注3)。「その他の軍事用途」については「おそれ」の段階は存在せず、「用いられる場合」「疑いがある場合」「いずれにも該当しない場合」の3段階のみが適用されます。

グループA向けとグループA以外向けの重要な違い

「いずれにも該当しない場合(懸念なし・軍が需要者)」であっても、グループA向けは「事後報告」で足りるのに対し、グループA以外向けは「事前届出」が必要です。グループA以外向けの軍関係機関への輸出は、懸念がなくても輸出前に経産省への届出が必要となります。

表の注記

(注1)「失効」は当該輸出について包括許可が失効するもの。「届出」は当該輸出に先立ち経済産業大臣に届け出ることが必要なもの。「報告」は当該輸出を行った後に当該輸出の内容について経済産業大臣に報告を行うことが必要なもの。
(注2)核兵器等の開発等のために用いられるおそれがあるものとして経済産業大臣から通知を受けたとき(グループA向けのみ)に限り、失効する。
(注3)「用いられる(利用される)おそれがある場合」とは、「用いられる(利用される)場合」以外の場合であって、輸出される貨物が核兵器等開発等省令の規定に該当する場合または提供される技術が核兵器等開発等告示の規定に該当する場合、あるいは核兵器等の開発等のために用いられる(利用される)おそれがあるものとして経済産業大臣から通知を受けた場合を指す。この概念は核兵器等の開発等に限定されており、「その他の軍事用途」には適用されない。
なお、一般包括許可の条件を定める別表にも軍エンドユーザーに関する同様の表が規定されています。

「用いられる場合」「おそれがある場合」「疑いがある場合」の違い

3つの区分は、軍事用途への転用可能性の確度判断主体が異なります。

状況の区分判断主体内容備考
用いられる場合客観的事実軍事用途に使われることが確定している(契約書・連絡等で明確)核兵器等・その他軍事用途の両方に適用
用いられるおそれがある場合」(注2・注3)法令(核兵器等開発等省令・告示)または経産大臣のインフォーム通知核兵器等の用途に限定された概念。省令・告示の要件に該当するか経産大臣から通知を受けた場合。グループA向けは通知に限定(注2)核兵器等のみに適用(その他軍事用途には該当なし)
用いられる疑いがある場合輸出者自身輸出者が取引審査の中で自ら懸念を感じた場合核兵器等・その他軍事用途の両方に適用

実務上のポイント

軍・軍関係機関への輸出時のフロー

① 需要者が軍・軍関係機関またはこれに類する機関かどうかを確認する

② 軍関係機関への輸出と判断した場合、貨物の用途(核兵器等への転用の可能性)を審査する

③ インフォーム通知の有無を確認する

④ 表1に従い「失効(個別許可申請)」「届出」「報告」のいずれかの対応をとる

⑤ 「報告」の場合でも、輸出後速やかに経済産業省への報告を行う

注意:特別一般包括許可にも同様の条件あり

別表3の10(1)表1は一般包括許可の条件ですが、特別一般包括許可(別表3の(5))にも同様の内容の条件が付されています。包括許可の種類にかかわらず、軍・軍関係機関を需要者とする取引では、必ずこの条件に従った対応が必要です。

重要:「軍向けでも民需品なら問題ない」は誤り

表の「いずれにも該当しない場合」でも、軍・軍関係機関への輸出については報告義務(ホワイト国向け)または事前届出義務(ホワイト国以外向け)があります。「軍向けでも民生品だから不要」という判断は誤りです。軍関係機関への輸出はすべて慎重な用途確認と適切な対応が必要です。


別表3の(12)(表1):特別一般包括許可の軍エンドユーザー条件

包括許可取扱要領の別表1が一般包括許可の条件を、別表3が特別一般包括許可の条件を定めています。別表3の(12)(表1)は、特別一般包括許可に付される「軍・軍関係機関等を需要者とする取引」に関する条件表です。

項目内容
対象許可特別一般包括輸出・役務(使用に係るプログラム)取引許可
対応する一般包括の条件別表1の(10)(1)表1(内容は同じ)
表の構造仕向地(グループA向けか否か)×軍事用途の状況の組み合わせにより「失効」「届出」「報告」を定める。内容は別表1の(10)(1)表1と同一
別表1の(10)(1)表1と別表3の(12)(表1)の関係

2つの表は内容は同じですが、適用される包括許可の種類が異なります

別表1の(10)(1)表1別表3の(12)(表1)
適用される包括許可一般包括輸出・役務取引許可特別一般包括輸出・役務取引許可
表の内容同一:仕向地×軍事用途の状況 → 失効・届出・報告
対象地域グループA(別表第3)向けに限定グループA向けを含む全地域(グループA以外も対象)

つまり「別表3の(12)(表1)」は、特別一般包括許可を使った輸出における軍エンドユーザー条件(失効・届出・報告)を定めたものです。表の構造と注2の意味は別表1の(10)(1)表1と同様です。

7-14 特別返品等包括許可

「特別返品等包括許可」は、武器(1項該当品)について、不具合等による返品・修理・異品交換を一括して許可する制度です。通常の包括許可が対象としないような特殊な取引類型に対応しています。

特別返品等包括許可武器(1項)の返品・修理・異品交換を一括許可
対象貨物輸出令別表第1の1の項(武器)に該当する貨物、またはその物に内蔵された外為令別表の1の項に該当する技術(プログラム) 対象行為日本国内において使用するために輸入した武器等について、不具合による返品・修理・異品(品違い)のためのみに輸出する場合 仕向地輸出令別表第3に掲げる地域(ホワイト国)向けに限る 申請先経済産業省 安全保障貿易審査課(一般包括許可とは異なり、経産省本省が申請先) 有効期限3年間(更新可) ICP要件輸出管理内部規程の整備・届出および実地調査(立入検査)を受けていることが要件
活用場面

防衛装備品・武器システムを外国メーカーから輸入している防衛省・自衛隊向け納入業者や、外国製武器システムのMRO(整備・修理・オーバーホール)を行う企業が、故障品の返品や部品交換を繰り返し行う場合に有効です。1の項に限定された特殊な包括許可です。

注意

対象は「不具合による返品・修理・異品のためのみ」に限定されます。新たな輸出取引(販売目的)には使用できません。また仕向地はホワイト国(グループA)のみです。

7-15 展示会・一時輸出と包括許可の関係

展示会関連の包括許可として、展示会等包括役務取引許可という独立した制度が存在します。ただしこれは「役務(技術提供)のみ」を対象とした特殊な制度であり、貨物(物品)の輸出は対象外です。

7-15-1 展示会等包括役務取引許可(役務)

展示会等包括役務取引許可防衛装備の初期商談・展示会等での技術提供を一括許可(役務のみ)
対象行為展示会・商談会などの防衛装備の移転に係る初期段階の商談等における技術提供(役務取引のみ。貨物の輸出は含まない) 対象技術外為令別表の1の項(武器関連)に該当する技術。防衛装備品の基本技術情報の提供が主な対象 申請先経済産業省 安全保障貿易審査課(本省申請。郵送申請) 有効期限許可証に記載された期限による 主な申請書類①展示会等包括役務取引許可申請書(様式第12の2)
②申請理由書(様式第12の3)
③輸出管理に関する社内体制を示した文書(担当者名・連絡先を含む組織図等)
④基本技術情報に係る関係行政機関の長の意見書等の写し
活用場面

国際防衛装備展示会(DSEI等)や外国政府との防衛装備品に関する初期商談において、日本の防衛企業が外国企業・政府関係者に対して技術概要・スペック等を説明する場面で活用されます。「防衛装備移転三原則」に基づく適法な商談活動を支援する制度です。

注意:貨物の輸出は対象外・関係行政機関の意見書が必要

この許可は「役務(技術提供)のみ」が対象です。展示用の実機・サンプルなど貨物の輸出には別途個別許可等が必要です。また申請に際して「基本技術情報に係る関係行政機関の長の意見書等」が必要であり、防衛省等の関係機関との調整が前提となる点が他の包括許可と異なります。

7-15-2 貨物の展示会・一時輸出向けの対応

展示会等包括役務取引許可は役務(技術)のみが対象であり、展示品・デモ機等の貨物(物品)の一時輸出については以下の方法で対応します。

対応方法内容注意点
個別輸出許可(一時輸出)通常の個別許可申請で一時輸出を申請。展示終了後に返送(再輸入)許可証の有効期間(原則6か月)内に輸出を完了すること
特別一般包括許可の「返送に係る輸出」分析・評価等のため無償で一時的に持ち込まれた貨物の返送について適用可能な場合がある輸入許可日から1年以内の返送・性能等向上なしが条件
展示会輸出の実務上の注意点

「展示・デモのみで販売しないから許可不要」という判断は誤りです。リスト規制品目(1〜15項)に該当する貨物は展示目的でも輸出許可が必要です。また展示会場での技術説明・デモンストレーションは、非居住者への「みなし輸出(役務取引)」として別途役務取引許可が必要になる場合があります。この場合、展示会等包括役務取引許可が活用できます。

7-16 包括許可の種類まとめ

種類主な対象・特徴有効期限ICP要件レベル
一般包括許可ホワイト国向け2〜14項の繰り返し輸出。申請要件が最も簡易3年軽微(内部規程または責任者登録)
特別一般包括許可ホワイト国以外を含む広範な仕向地・品目。返送に係る輸出も含む3年高(CP届出+実地調査+社内審査実績)
特定包括許可継続的取引関係がある同一の相手方への繰り返し輸出3年中程度
特別返品等包括許可武器(1項)の不具合返品・修理・異品交換。ホワイト国向けのみ。貨物のみ対象3年高(CP届出+実地調査)
特定子会社包括許可議決権50%超の海外子会社向けの継続的輸出3年高(CP届出+実地調査)
役務(特定)包括許可技術提供(役務取引)の包括許可。一般・特定の2種類がある3年種類による
展示会等包括役務取引許可防衛装備の初期商談・展示会等での技術提供(役務のみ)。関係行政機関の意見書が必要許可証記載の期限特別(社内体制文書+関係省庁意見書)
貨物の輸出と役務(技術提供)は別々の許可

展示会等包括役務取引許可は役務(技術提供)専用です。展示品等の貨物輸出は別途個別許可または他の包括許可で対応します。展示会では「貨物の輸出」と「技術の提供(説明・デモ)」が一体的に行われることが多いため、双方の許可の確認が必要です。

7-17 包括許可種類別 新規申請に必要な提出書類一覧

各包括許可の新規申請に必要な主な提出書類を種類別にまとめた参照表です。申請の都度、経済産業省の最新の提出書類通達(様式)を確認してください。

申請方法の違いに注意

一般包括・特別一般包括は電子申請(NACCS)が原則です。特定包括・特別返品等包括・特定子会社包括・展示会等包括は郵送またはメール申請(安全保障貿易審査課宛て)です。申請窓口も許可の種類により異なります(一般・特別一般は各経済産業局、その他は経産省本省安全保障貿易審査課)。

書類の種類 一般包括
許可
特別一般
包括許可
特定包括
許可
特別返品等
包括許可
特定子会社
包括許可
展示会等
包括役務
取引許可
申請書(各様式)
JETファイルに直接記入

JETファイルに直接記入

様式第4または第5

様式第7(2通)

様式第10(2通)

様式第12の2(2通)
申請理由書
様式第8

様式第11

様式第12の3
チェックリスト(CL)受理票の写し
CP届出要件で申請する場合のみ必要(申請前13か月以内に発行のもの)

申請前13か月以内に発行のもの

Ⅳ2(2)要件で申請する場合
特定輸出者承認書の写し
実施状況調査を受けていない特定輸出者が申請する場合
輸出管理に関する社内体制明細書
様式第9の2
輸出管理に関する社内体制を示した文書
(組織図等)

担当者の氏名・連絡先を含む
輸入者・取引の相手方の概要の説明書
継続的な取引実績または見込みを示す書類
需要者の誓約書(提出書類通達様式第2)
特定子会社包括許可申請明細書
様式第11
誓約事項の遵守を徹底するための管理体制を示す書類
様式第12
基本技術情報に係る関係行政機関の長の意見書等の写し
防衛省等の意見書
申請窓口 各経済産業局・通商事務所・沖縄総合事務局 各経済産業局・通商事務所・沖縄総合事務局 安全保障貿易審査課(本省) 安全保障貿易審査課(本省) 安全保障貿易審査課(本省) 安全保障貿易審査課(本省)
申請方法 電子申請(NACCS) 電子申請(NACCS) 郵送またはメール 郵送またはメール 郵送またはメール 郵送
凡例・注意事項

●=原則必要 △=条件によって必要 ―=原則不要
※上記は新規申請の場合の主な書類です。変更申請・更新申請は書類が異なります。
※経済産業大臣が必要と認める場合は上記以外の書類提出を求められることがあります。
※最新の様式・記載要領は必ず経済産業省の公式ページ(包括許可申請書類ページ)で確認してください。

7-18 個別許可申請の提出書類一覧

個別輸出許可・個別役務取引許可・仲介貿易取引許可それぞれの申請に必要な主な書類を整理しています。提出書類の詳細は貨物の該当項番(1〜15項)と仕向地の組み合わせにより異なりますので、必ず経済産業省の申請書類・窓口一覧ページで確認してください。

重要:書類は項番×仕向地の組み合わせで決まる

個別輸出許可の申請書類は「貨物が輸出令別表第1のどの項番に該当するか」と「仕向地(輸出先国)」の組み合わせで決まり、10以上のパターンがあります。同様に申請窓口も「本省(安全保障貿易審査課)」か「各経済産業局」かに分かれます。申請窓口を間違えると取り下げ・再申請が必要になるため、事前の確認が不可欠です。

A 個別輸出許可申請(貨物)

書類の種類必要性内容・備考
輸出許可申請書(JETファイル)電子申請(NACCS外為法関連業務)が原則。NACCSの様式に入力して送信。
取引概要説明書取引の全体像(商流・物流・当事者・最終用途)を説明する書類。任意様式だが詳細な記載が必要。
貨物の仕様書・カタログ等該当する貨物の技術仕様・性能が確認できる資料(製品カタログ・スペックシート等)。
該非判定書(項目別対比表等)貨物が輸出令別表第1のどの項番に該当するかを示す判定書。CISTECのパラメータシートも可。
契約書(写し)売買契約書・注文書等。取引内容・当事者・金額・数量・仕向地が記載されたもの。
最終用途誓約書(様式第2または第3)需要者が最終用途を誓約した書面。需要者確定の場合は様式第2、未確定の場合は様式第3。英文が多い。
需要者の事業内容を示す書類需要者の会社概要・パンフレット・ウェブサイト印刷等。仕向地・貨物の機微度により求められる。
仕向地証明書(政府発行)化学兵器禁止条約(CWC)関連品目(3項)など特定の項番で、輸入国政府発行の証明書(様式第7相当)が必要となる場合がある。
申請理由書許可取得の必要性・緊急性等を説明する書類。一部の項番・仕向地の組み合わせで必要。
申請窓口項番・仕向地の組み合わせにより、本省(安全保障貿易審査課)または各経済産業局・通商事務所のいずれか
申請方法電子申請(NACCS外為法関連業務)が原則。対面受付は実施していない。
許可証の有効期限通常6か月。期限内に輸出しなければならない。

B 個別役務取引許可申請(技術提供)

書類の種類必要性内容・備考
役務取引許可申請書(JETファイル)電子申請(NACCS外為法関連業務)が原則。
申請理由書技術提供の目的・内容・必要性を記載した書類。
取引概要説明書技術提供の全体像(提供する技術の内容・提供先・利用目的・提供形態)を説明。
提供技術説明書提供しようとする技術の内容・仕様を説明する書類。カタログ・仕様書等の技術資料でも代替可。
契約書(写し)技術提供に係る契約書・委託契約書・共同研究契約書等。
最終用途誓約書(様式第2または第3)技術を利用する者(利用者)および取引の相手方からの誓約書。
利用者・取引相手方の事業内容を示す書類技術の利用者の会社概要・組織図等。提供技術の機微度・仕向地により求められる。
申請窓口技術の該当項番・提供地の組み合わせにより、本省(安全保障貿易審査課)または各経済産業局のいずれか
申請方法電子申請(NACCS外為法関連業務)が原則。
プログラム提供の特例プログラム(ソフトウェア)の提供の場合は申請理由書・取引概要説明書に代えて「輸出許可・役務(プログラム)取引許可申請内容明細書(様式第1)」を提出。

C 仲介貿易取引許可申請

外国相互間の武器・リスト規制品の売買・貸借・贈与に係る取引(貨物が日本を経由しない場合も含む)については、外為法第25条第4項に基づき許可申請が必要です。

書類の種類必要性内容・備考
仲介貿易取引許可申請書経産省所定の様式による申請書。
申請理由書仲介取引を行う必要性・取引の内容を記載。
取引概要説明書取引の全体像(商流・物流・当事者・船積地・仕向地・最終用途)を説明する書類。
貨物の仕様書・カタログ等仲介する貨物の性能・仕様が確認できる資料。
契約書(写し)売買・貸借・贈与に関する契約書。船積地・仕向地が確認できるもの。
最終用途誓約書(様式第2または第3)最終需要者の誓約書(用途・再輸出不可等)。
需要者の事業内容を示す書類最終需要者の会社概要・組織図等。貨物の機微度により求められる。
申請窓口安全保障貿易審査課(本省)
申請方法電子申請(NACCS外為法関連業務)が原則。
凡例・共通注意事項

●=原則必要 △=案件・項番・仕向地等の条件により必要 ―=原則不要
※上記は代表的な書類です。実際に必要な書類は案件ごとに異なります。審査の過程で追加書類の提出を求められることがあります。
※経済産業大臣の許可申請手数料は無料です。
※審査期間は申請受理後原則90日以内ですが、実務上は局窓口案件が約2週間、本省窓口案件が3〜6週間程度(案件により異なる)です。
※最新の様式・記載要領・申請書類一覧は必ず経済産業省の公式ページ(申請書類・窓口一覧)で確認してください。

第8章

需要者・用途審査

「誰に」「何のために」輸出・提供するかを確認する審査です。リスト規制・キャッチオール規制の両方に共通して求められる、輸出管理実務の核心です。

8-1 需要者・用途審査とは

輸出者等遵守基準(省令第60号)は、輸出者・役務提供者が取引を行う際に需要者の確認と用途の確認を行うことを義務付けています。リスト規制に該当する場合の許可申請はもちろん、キャッチオール規制の客観要件に該当するかの判断においても、この審査が不可欠です。

審査の種類確認する内容主な根拠
用途審査輸出・提供する貨物・技術が、大量破壊兵器や通常兵器の開発等に用いられるおそれがないか輸出者等遵守基準省令第1条第2号ニ
需要者審査需要者等(輸入者・需要者・技術利用者)が大量破壊兵器等の開発等を行っているか、またはEUL掲載先でないか同上・キャッチオール客観要件(需要者要件)
リスト規制でも需要者・用途審査は必要

リスト規制に該当し個別許可申請を行う場合でも、許可審査において需要者・最終用途の確認が行われます。また、リスト規制品であってもキャッチオール規制の用途要件・需要者要件の確認自体は別途不要ですが、輸出者等遵守基準に基づく需要者確認は常に求められます。

8-2 用途審査の実務

貨物・技術の最終用途(エンドユース)が何かを確認します。以下の情報源から判断します。

確認手段内容
注文書・契約書の記載用途・使用場所・最終需要者の記載内容を精査
エンドユース証明書(EUC)の取得需要者から「用途」「再輸出しない旨」等を記載した書面を取得。形式は自由だが内容を具体的に記載させる
カタログ・技術仕様書との照合発注された仕様が民生用途として合理的か確認
現地調査・問い合わせ取引相手に用途を具体的に説明させ、不自然な点がないか確認
「おそれ省令」(核兵器等開発等省令・通常兵器開発等省令)

用途要件に該当するかは、「核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合を定める省令(WMD用)」および「輸出令別表第1の1の項の中欄に掲げる貨物の開発等のために用いられるおそれがある場合を定める省令(通常兵器用)」で定められており、これらを「おそれ省令」と呼びます。用途確認はこれらのリストを念頭に行います。

8-3 需要者審査の実務

誰が最終的に貨物・技術を使用するかを確認します。輸入者(バイヤー)と最終需要者(エンドユーザー)が異なる場合は、両者について確認が必要です。

8-3-1 外国ユーザーリスト(EUL)の確認

外国ユーザーリスト(EUL)は、大量破壊兵器等の開発等への関与が懸念される外国の企業・機関・研究機関等を経済産業省が公表したリストです。

確認事項内容
掲載の有無輸入者・需要者・最終使用者の名称がEULに掲載されていないかを確認。類似名称(別名・英文・略称)にも注意。
懸念区分掲載企業には「核」「化学」「生物」「ミサイル」の懸念区分が記載。その懸念区分に係る貨物・技術の提供は特に慎重に。
改正頻度年1回以上改正される。輸出のつど最新版(経産省HPのPDF)を確認すること。
掲載先との取引EUL掲載企業への輸出は、大量破壊兵器等の開発等に用いられないことが明らかな場合を除き、許可申請が必要。「輸出禁止リスト」ではないが事実上要許可。

8-3-2 需要者に関する情報収集

確認項目具体的な確認方法
企業・機関の概要公式ウェブサイト・パンフレット・業界情報等で事業内容・所在地・組織構成を確認
軍・政府との関係軍需品製造・研究機関・国防省関連会社でないかを確認
過去の取引実績継続取引先であれば過去の取引情報を活用。新規取引先はより慎重な調査が必要
第三者リスト照合米国BISのEntity List等、複数の制裁リストとの照合も有効(EARとの関係上も重要)

8-4 レッドフラッグ(懸念シグナル)

以下の「レッドフラッグ」が見られる場合は、取引を慎重に再検討する必要があります。一つでも該当すれば取引を中断し、追加確認・経産省への相談を検討してください。

カテゴリレッドフラッグの例
用途関連通常の民間用途に比べて不合理な仕様・数量の発注 / 用途の説明を拒否または不明瞭 / 民生用品として説明されているのに軍用仕様を要求
需要者関連軍・政府機関との密接な関係が不透明 / EUL掲載先またはその関係者 / 企業情報が不明・実態のない会社 / 大量破壊兵器の開発実績・研究実績がある機関
取引条件関連不自然な支払方法(現金前払い等)/ 第三者が代金を支払う / 輸送先・最終仕向地が不明・変更される / 通常の業界慣行から著しく逸脱した条件
輸送・物流関連懸念国を経由する不自然な迂回輸送 / 転売・再輸出の禁止条件を拒否 / 輸送ルートや荷受人の開示を拒否
情報関連「民生用」と言いながら軍事技術に詳しい担当者が交渉 / 書面の提供を拒否・形式的な書面しか用意しない
重要:レッドフラッグ=「懸念あり」ではなく「追加確認が必要」

レッドフラッグに該当しても、直ちに輸出禁止・許可必要ということではありません。正当な理由が確認できれば取引は可能です。ただし、確認できない場合や説明に不自然な点がある場合は、取引の中断・経済産業省への事前相談を検討してください。

参考:米国商務省BISのレッドフラッグ指標(EAR Supplement No.3 to Part 732)

米国BISは「Know Your Customer Guidance」の一環として、EARにおけるレッドフラッグ指標を公式に公表しています(EAR Part 732 付録3)。日本の外為法上の判断とは直接の法的効力はありませんが、国際的な取引審査の参考として活用できます。主な指標は以下のとおりです。

  • 顧客や住所がBISの取引禁止者リスト(DPL)掲載先に類似している
  • 顧客や購買代理人が最終用途の説明を拒む
  • 製品の性能が購入者の事業内容と合致しない(例:小規模パン屋が高性能コンピューターを発注)
  • 注文品が仕向国の技術水準と不釣り合い(例:電子産業のない国への半導体製造装置)
  • 高額品の代金を現金で支払おうとする(通常は融資条件が適用される場合)
  • 顧客の事業背景がほとんどない、または不明
  • 購入品が国内使用か輸出・再輸出かについて質問されると曖昧な回答をする

出典:BIS "Red Flag Indicators" (bis.doc.gov) / EAR Supplement No. 3 to Part 732

8-5 「明らか」ガイドライン

キャッチオール規制の需要者要件では、EUL掲載先への輸出でも「大量破壊兵器等の開発等に用いられないことが明らかなとき」は許可不要とされています。この「明らか」の判断基準は、経済産業省の「明らかガイドライン」(「大量破壊兵器等及び通常兵器に係る補完的輸出規制に関する輸出手続等について」)で提示されています。

「明らか」と判断できる場合の例
貨物・技術の性質上、大量破壊兵器等の開発等に使用することが技術的に不可能な場合
最終用途が大量破壊兵器等の開発等と全く無関係な分野(食料品等の民生用途)であることが書面で確認できる場合
需要者のEUL掲載の懸念区分(核・化学・生物・ミサイル等)と輸出する貨物・技術の性質が全く無関係な場合
「明らか」の判断は輸出者が行う

「明らかかどうか」の判断は輸出者自身が行います。判断が困難な場合は、経産省安全保障貿易審査課に事前相談することが強く推奨されます。判断根拠は必ず書面で記録・保管してください。

8-6 インフォームへの対応

経済産業大臣から「当該貨物が大量破壊兵器等の開発等(または通常兵器の開発等)に用いられるおそれがある」旨の通知(インフォーム通知)を受けた場合は、許可申請が義務付けられます。以下のとおり対応してください。

1
通知内容の確認経産省から書面で届く。対象貨物・仕向地・需要者等を確認する。
2
出荷・提供の停止インフォームを受けた時点で、当該取引の出荷・提供を直ちに停止する。
3
許可申請の実施経産省安全保障貿易審査課に個別許可申請を提出する。許可が下りるまで輸出・提供はできない。
4
記録の保管インフォームの受領・対応の経緯を書面で記録し保管する(5年間)。
インフォームは「一般包括許可の失効トリガー」にもなる

一般包括許可・特別一般包括許可を使用して輸出する場合でも、インフォーム通知を受けた取引については当該包括許可が失効し、個別許可の取得が必要となります(第7章参照)。

第9章

社内管理体制(ICP)

ICP(Internal Compliance Program=輸出管理内部規程、実務ではCPとも略される)の整備は、包括許可取得・維持の前提条件であり、企業の輸出管理の根幹です。第7章の包括許可申請と深く連動しています。

9-1 ICPとは何か

ICPとは、企業・大学・研究機関が外為法等の安全保障貿易管理法令を自律的に遵守するために整備する社内管理の仕組み(内部規程・体制)の総称です。英語では Internal Compliance Program と呼ばれます。

なぜICPが必要か

外為法は「輸出者自らが責任を持って管理する」ことを前提としています。経済産業省は企業のICPの整備・運用状況を確認した上で包括許可を付与する仕組みをとっており、ICPのない企業は包括許可を取得できません。また違反時の情状判断にも影響します。

ICP整備が義務となる根拠

「輸出者等遵守基準を定める省令」(平成21年経済産業省令第60号)に基づき、輸出者・役務提供者は一定の内部管理体制を整備する義務があります。特別一般包括許可等の取得にはより高度なICPが求められます。

9-2 ICPと包括許可の関係

包括許可の種類によって、求められるICPのレベルが異なります。

包括許可の種類求められるICP要件確認方法
一般包括許可基本的なICP整備(内部規程・管理責任者・教育等)。チェックリスト受理票は条件付きで必要。申請時にNACCSで電子申請。ICPの届出は原則不要(②の要件で申請する場合はCL受理票が必要)
特別一般包括許可充実したICPが必須。輸出管理内部規程(CP)の届出・受理票の取得、チェックリスト(CL)受理票の取得、経産省による実施状況調査(立入検査等)の受検が要件。申請前にCP・CLを安全保障貿易検査官室へ届出・受理を受ける。その後NACCS電子申請。
特定包括許可・特定子会社包括許可特別一般包括許可と同等以上のICP。CP受理票・CL受理票の取得が申請要件。CP・CLの受理後、郵送またはメールで申請。
特別返品等包括許可輸出管理に関する社内体制明細書(様式第9の2)の提出が必要。社内体制の文書化が申請書類の一つ。
CP受理票・CL受理票とは

CP受理票(輸出管理内部規程受理票):企業が整備した輸出管理内部規程を経産省安全保障貿易検査官室に届け出て受理されたことを示す票。
CL受理票(チェックリスト受理票):「輸出者等概要・自己管理チェックリスト」を検査官室に提出して受理されたことを示す票。特別一般包括許可等の申請の前提条件となります。

CLは自社で作成して毎年提出するもの

チェックリスト(CL)は経産省が用意した様式(Excel)を自社でダウンロードし、自社の輸出管理の実施状況を記入して作成するものです。様式は経産省「企業等の自主管理の促進」ページから入手できます。
CP受理票を持つ企業・機関は毎年7月1日〜7月31日の間に検査官室へ提出(NACCS汎用申請「05 包括報告」等)し、内容が適切と認められるとCL受理票が発行されます。CL受理票の有効期間は概ね1年で、更新が必要です。

9-3 ICPの基本要素

経産省が定める「輸出者等遵守基準」に基づき、ICPは以下の要素で構成されます。

① 経営陣のコミットメント

トップが安全保障貿易管理の重要性を認識し、方針を明確にすること。統括責任者(経営幹部)・該非確認責任者の選任が必要。

② 組織・人員の整備

輸出管理担当部門の設置、管理責任者・担当者の明確化。業務量に応じた適切な人員配置。

③ 社内規程・手順書の整備

該非判定・用途確認・許可申請・書類保管・違反時の対応等の手順を文書化した社内規程の整備。

④ 教育・訓練の実施

関係従業員への定期的な教育・訓練の実施(年1回以上が目安)。適格説明会(経産省・CISTEC主催)への参加も要件となる場合がある。

⑤ 内部監査の実施

輸出関連全部門を対象とした内部監査を年1回以上実施し、不備を継続的に改善する仕組みの構築。

⑥ 記録保管

輸出許可証・該非判定書・契約書・用途確認書類等を原則7年間(外為法上は5年間)保管。電子保管も可。

9-4 ICPの実施状況調査(立入検査)

特別一般包括許可等の申請にあたっては、経産省安全保障貿易検査官室による実施状況調査(立入検査または書面検査)を事前に受けることが要件となっています。

調査の種類内容
立入検査検査官が企業に訪問し、規程・帳票・教育記録・監査記録等を直接確認する。
書面検査書面または音声通話等により、ICPの実施状況を確認する。
調査後の指導への対応

実施状況調査に基づき書面による指導を受けた場合は、その改善が確認されるまでは特別一般包括許可等の要件を満たさないものとして扱われます。指導内容への対応を速やかに行うことが重要です。

9-5 大学・研究機関におけるICP

企業だけでなく、大学・研究機関もICP整備が求められます。留学生・外国人研究者の受け入れが多い環境では、みなし輸出管理・特定類型該当者の確認が特に重要です(第3・4章参照)。

大学・研究機関特有の管理ポイント内容
技術提供の場の管理研究室・実験室・共同研究での外国人研究者への技術説明・資料共有
留学生・外国人研究者の居住性確認入国後6月の経過状況・所属先での雇用の有無の確認(第3章参照)
特定類型該当性の確認外国政府・外国企業との契約・資金提供の有無を確認(第4章参照)
公知技術の判断学会発表・論文・教育内容が公知技術の例外に該当するか確認(第7章参照)
産学連携研究の管理企業との共同研究・受託研究は基礎科学例外に当たらないケースが多い
ICPとCISTEC

安全保障貿易情報センター(CISTEC)は、ICP整備のための相談対応・研修・認定試験(STC試験)を提供しています。また経産省主催の「適格説明会」への参加は、特別一般包括許可等の申請要件の一つとなる場合があります。自社のICP水準を客観的に把握するためにも、CISTEC等の外部機関の活用が有効です。

第10章

違反と罰則

外為法に違反した場合、刑事罰と行政制裁の両方が科せられます。刑事罰は故意の場合が対象ですが、行政制裁は過失でも対象となり、時効もありません。

10-1 刑事罰(外為法第9章 第69条の6〜第73条)

刑事罰は外為法第9章(第69条の6〜第73条)に規定されています。条文ごとに対象となる違反行為と刑の重さが異なります。

根拠条文対象となる主な違反行為個人への刑事罰法人への罰金
(第72条・両罰規定)
第69条の6第2項 核兵器等のおそれが特に大きい技術・貨物の無許可輸出・無許可役務取引
(第2項第1号:核兵器等に係る役務取引、第2項第2号:核兵器等に係る輸出)
10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金、または併科
※目的物価格の5倍が3,000万円超の場合はその5倍以下
10億円以下
(第72条第1号)
第69条の6第1項 上記以外の規制品の無許可輸出・無許可役務取引・無許可仲介貿易
(第1項第1号:役務取引・仲介貿易、第1項第2号:貨物の輸出)
7年以下の拘禁刑もしくは2,000万円以下の罰金、または併科
※目的物価格の5倍が2,000万円超の場合はその5倍以下
7億円以下
(第72条第2号)
第69条の7 第25条第2項(みなし輸出等)・第3項違反による無許可役務取引、第48条第2項・第3項違反による無許可輸出、第52条違反による無許可輸入・無承認輸出入 5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、または併科
※目的物価格の5倍が1,000万円超の場合はその5倍以下
5億円以下
(第72条第3号)
第70条の2 第18条の4等の規定による命令違反(外国直接投資・特定取得関連) 2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、または併科 3億円以下
(第72条第4号)
第70条 支払等の無許可・命令違反、資本取引の無許可行為、輸出入停止命令違反等(為替・資本取引関連) 3年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、または併科
※目的物価格の3倍が100万円超の場合はその3倍以下
各本条の罰金刑
(第72条第5号)
第71条 支払手段等の輸出入に係る届出義務違反、報告義務違反(第55条・第55条の3〜第55条の8・第55条の12等)、帳簿不作成・虚偽記載等 6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 各本条の罰金刑
(第72条第5号)
第73条 特定届出義務違反(第55条の3第6項)、許可条件違反(第67条第1項)等 10万円以下の過料(刑事罰ではなく行政罰)
両罰規定(第72条)の構造

法人の代表者・代理人・使用人などの従業者が違反行為をした場合、行為者本人に刑事罰が科せられるとともに、その法人にも罰金刑が科せられます(第72条)。第1〜4号は個人の罰金よりも法人への罰金が大幅に重く設定されています(例:第69条の6第2項→個人3,000万円に対し法人10億円)。第5号(第70条・第71条違反)のみ個人と同額の「各本条の罰金刑」となっています。

未遂罪(第69条の6第3項)

第69条の6第3項により、第1項第2号(一般規制品の無許可輸出)および第2項第2号(核兵器等の無許可輸出)の貨物の輸出に係る部分については未遂罪も処罰されます。なお、役務取引(技術提供)の未遂は処罰対象外です。

10-2 行政制裁措置(外為法第53条・第25条の2)

刑事罰とは別に、経済産業大臣は行政制裁として輸出等の禁止命令を発することができます。行政制裁は過失による違反でも対象となり、時効がない点が刑事罰と大きく異なります。

(1)輸出・技術提供等の禁止

違反の種類根拠条文禁止期間禁止される行為
無許可輸出(第48条第1項違反) 第53条第1項 3年以内 輸出の全部または一部の禁止(特定技術の提供等も併せて禁止される場合がある)
貨物の輸出・輸入に関するその他の違反 第53条第2項 1年以内
(対応措置違反は3年以内)
輸出または輸入の全部または一部の禁止
無許可役務取引(第25条第1項違反) 第25条の2第1項 3年以内 技術提供・技術記録媒体等輸出・特定技術に係る貨物輸出の禁止
みなし輸出等の無許可取引(第25条第2項・第3項違反) 第25条の2第2項 1年以内 技術提供・技術記録媒体等輸出・貨物輸出の禁止
無許可仲介貿易取引(第25条第4項違反) 第25条の2第3項 3年以内 仲介貿易取引・貨物輸出の禁止
経済制裁関連の無許可役務取引等(第25条第6項違反) 第25条の2第4項 1年以内 役務取引等の全部または一部の禁止

(2)役員就任等の禁止(第53条第3項・第4項、第25条の2準用)

対象内容
輸出禁止等の命令を受けた個人 禁止期間中、別会社の輸出業務担当役員等への就任・業務執行の禁止(制裁逃れのための別会社設立・利用への対策として2017年改正で追加)
違反者に関係する法人 違反事実・責任の程度を考慮し、禁止の実効性確保のため当該法人の業務を制限できる場合がある
行政制裁の主な特徴
過失でも対象刑事罰は故意犯が前提ですが、行政制裁は過失による違反(管理体制の不備等)でも科せられます。
時効なし刑事罰の時効が成立した後でも、行政制裁を科すことができます。不起訴になった場合でも行政制裁が科せられた事例があります。
包括許可の取消違反が発覚した場合、行政制裁と併せて保有する包括許可が取り消される可能性があります。個別許可への切り替えは企業の実務負担を大幅に増大させます。
AEO認定への影響外為法違反による法令遵守体制への疑義から、税関のAEO(認定事業者)認定が取り消される可能性があります。

10-3 行政指導・事後審査

経済産業省は違反発覚時に刑事告発・行政制裁のほか、行政指導ベースの対応も行います。自主申告の場合は処分の軽減が考慮されます。

対応の種類内容
刑事告発悪質・重大な違反に対し、検察庁への告発を行う。
行政制裁第53条に基づく輸出等の禁止命令(上記参照)。企業名が公表される。
警告文書制裁には至らないが是正を求める文書を発出。企業名が公表される場合がある。
経緯書・報告書の提出軽微な違反の場合、再発防止策を含む報告書の提出を求める。原則企業名非公表。
自主申告による処分軽減

社内監査等で違反を発見した場合は、速やかに経産省の安全保障貿易検査官室(安検室)へ自主申告することが重要です。自主申告の場合は、悪質性・故意性・法益侵害の程度等を考慮し、再発防止指導を中心とした対応がなされ、過大なペナルティが科せられないよう運用されています。

行政庁への不服申立(外為法第7章の2・第56条〜第64条)

経済産業大臣による処分(輸出許可の拒否・取消し、行政制裁命令等)に不服がある場合は、外為法第7章の2(第56条〜第64条)の規定に基づき、審査請求を行うことができます。

項目内容
審査請求先経済産業大臣(処分庁)に対して審査請求を行う
根拠条文外為法第56条〜第64条(第7章の2「審査請求」)
不服申立後の手続き審査請求の裁決に不服がある場合は、取消訴訟等の行政訴訟を提起することができる(行政事件訴訟法)

※なお、外為法第55条の13により、外為法第25条第1項・第48条第1項等に基づく許可またはその取消しについては行政手続法第2章・第3章(申請・不利益処分の手続き)の適用が除外されています。これは安全保障上の政策判断に基づく許可処分に対して行政手続法の標準的手続きを適用しないことを意味するものです。

重要:違反の典型例と注意点(経産省・令和6年度分析)

◆ 違反原因の内訳(令和6年度)

原因区分割合主な内容
該非判定に係る違反52%(最多)判定未実施・非規制思い込みが32%、判定誤り・他者の誤判定の鵜呑みが残り20%
管理体制に係る違反36%外為法の認識欠如・知識不足・輸出管理体制の未整備など

◆ 規制種別・法令別の内訳

違反全体のうち貨物の輸出(外為法第48条第1項)が84%、役務の提供(同第25条第1項)が16%。大量破壊兵器関連(2項・3項)該当品に関する違反が目立った。

◆ キャッチオール規制違反について

キャッチオール規制(16項)はリスト規制(1〜15項)に非該当の品目が対象です。そもそも該非判定を未実施のまま輸出するケースや「民生品だから問題ない」という思い込みが典型的な違反パターンであり、キャッチオール規制違反もその延長線上に発生します。一般的な工業製品・計測器・ポンプ・化学品であっても大量破壊兵器開発施設に使用された事例が実際に発生しています。「民生品だから」「いつもの取引先だから」という判断は危険です。

◆ その他の注意点

仲介貿易取引の無許可実施:「貨物が日本を通過しないから外為法の適用外」という誤解は禁物。外為法第25条第4項により規制対象となります。
担当者個人の責任:両罰規定により、上司の指示があっても実行した担当者個人も処罰対象です。
ICP未届け企業に多い:ICP(輸出管理内部規程/Internal Compliance Program、実務ではCPとも略される)の届出がなく、比較的規模の小さい企業での違反割合が大きい傾向があります(ICPの詳細は→第9章参照)。

第11章

米国の再輸出規制(EAR)

米国の輸出管理規則(EAR)は、米国原産品・米国技術を組み込んだ製品・技術を第三国に再輸出する際にも適用されます。日本企業が扱う多くの製品・部品が対象となりうるため、外為法と並んで必ず理解が必要な規制です。

11-1 EARとは何か

EAR(Export Administration Regulations)は、米国商務省産業安全保障局(BIS:Bureau of Industry and Security)が管轄する輸出管理規則です。米国原産の貨物・技術・ソフトウェアの輸出・再輸出・国内移転を規制しています。

EARの最大の特徴は、米国外に所在する企業・個人にも適用される域外管轄権(Extraterritorial Jurisdiction)を持つ点です。日本企業が日本国内で米国原産品を扱う場合や、第三国へ再輸出する場合にも、EARへの準拠義務が生じます。

重要:日本企業も対象

「我が社は米国企業ではないからEARは関係ない」という認識は誤りです。米国原産の部品・技術・ソフトウェアが自社製品に含まれている場合、その製品を第三国に輸出する際にEARの許可が必要になる場合があります。

11-2 EARの管轄機関と根拠法

項目内容
根拠法輸出管理改革法(ECRA:Export Control Reform Act of 2018)
規則輸出管理規則(EAR:Export Administration Regulations、15 CFR Parts 730-774)
管轄機関米国商務省産業安全保障局(BIS)
対象デュアルユース品目(民間・軍事両用)。軍事専用品はITAR(国務省管轄)が別途規制

11-3 EAR規制の基本概念:「米国原産品」の定義

EARが適用される「米国原産品(U.S.-origin items)」には以下が含まれます。

直接的な米国原産品

米国内で製造・生成された貨物、米国原産の技術・ソフトウェア。米国から一度輸出された後も、「米国原産」の性質は失われない。

外国製品への適用(de minimis rule)

外国で製造された製品であっても、米国原産の部品・技術が一定割合(原則25%、特定品目は10%)以上含まれる場合はEARの対象となる。

外国直接製品規則(FDPR:Foreign Direct Product Rule)

米国原産の技術・ソフトウェアを使用して外国で製造された製品も、一定の条件下でEARの対象となる。半導体製造装置等への適用が近年拡大されており、日本の製造業への影響が大きい。

11-4 ECCN(輸出規制分類番号)

EARでは、規制対象品目をECCN(Export Control Classification Number)で分類します。ECCNは5桁の英数字で表され、日本の輸出令別表第1に相当する分類体系です。

ECCNの構造内容
第1桁(カテゴリ)0〜9の数字。品目の種類を示す3=電子機器、7=航法・航空電子
第2桁(グループ)A〜EのアルファベットA=システム・機器、E=技術
第3〜5桁3桁の数字。品目の詳細を示す001、002 等
EAR99とは

ECCNが付与されていない品目は「EAR99」に分類されます。EAR99品目は原則として許可不要ですが、禁輸国・禁止エンドユーザーへの輸出や、大量破壊兵器への転用が疑われる場合は許可が必要となる場合があります。

11-5 再輸出規制の仕組み

「再輸出(Re-export)」とは、米国外から別の外国へ品目を移転することです。日本企業が米国から輸入した品目、または米国原産部品を含む製品を第三国に輸出する行為が「再輸出」に当たります。

行為の種類定義
輸出(Export)米国から外国への移転米国メーカーが日本の商社へ輸出
再輸出(Re-export)米国外から別の外国への移転日本の商社が受け取った米国品を中東へ輸出
国内移転(In-country transfer)同一国内での異なる者への移転日本国内で米国品を別の日本企業へ転売

11-6 Commerce Country Chart(国別規制マトリクス)

EARでは、仕向地(国)とECCNの組み合わせによって許可要否を判断する「Commerce Country Chart」が用いられます。各ECCNには規制理由コード(AT、CB、NS等)が付与されており、仕向国との組み合わせで許可が必要かどうかが決まります。

規制理由コード内容
AT(Anti-Terrorism)テロ支援防止
CB(Chemical & Biological)化学・生物兵器不拡散
NS(National Security)国家安全保障
NP(Nuclear Nonproliferation)核不拡散
MT(Missile Technology)ミサイル技術管理
RS(Regional Stability)地域の安定
UN(United Nations)国連安保理制裁

11-7 許可例外(License Exception)

EARでは、一定の条件を満たす場合に個別許可なしに輸出・再輸出できる「許可例外」が設けられています。主な許可例外は以下のとおりです。

許可例外正式名称概要
LVSLow Value Shipments少額取引(品目・金額による制限あり)
GBSGroup B Countries Shipments特定の友好国向け取引
CIVCivil End-Users民間エンドユーザー向け
TSRTechnology and Software Restricted技術・ソフトウェアの特定条件下での提供
TMPTemporary Imports, Exports, Re-exports一時的な輸出・再輸出
ENCEncryption Commodities and Software暗号品目の特定条件下での輸出
注意

許可例外を適用するには、品目・仕向地・エンドユーザー等が例外の要件を満たしているかを詳細に確認する必要があります。要件を満たさないまま許可例外を使用することはEAR違反となります。

11-8 規制対象リスト(制裁リスト)

EARでは、特定の人物・企業・機関との取引を禁止・制限するリストが複数存在します。これらのリストへの掲載確認は、すべての輸出取引で必須の確認事項です。

リスト名管轄内容
Entity List(EL)BIS(商務省)安全保障・外交政策上の懸念がある企業・個人。原則として輸出・再輸出には個別許可が必要(多くは許可拒否方針)
Denied Persons List(DPL)BIS(商務省)EAR違反により輸出特権を剥奪された個人・企業。一切の取引が禁止
Unverified List(UVL)BIS(商務省)エンドユーザー確認ができなかった企業・個人。追加的な確認義務が生じる
SDN ListOFAC(財務省)米国制裁対象者リスト。EARとは別に財務省OFACが管轄する制裁規則に基づく
Military End User List(MEU)BIS(商務省)軍事エンドユーザーとして指定された企業。特定品目の輸出に個別許可が必要
重要:Entity Listへの掲載企業との取引

中国・ロシア等の特定企業多数がEntity Listに掲載されています。これらの企業との取引(直接・間接を問わず)は、EARの許可なしに行うことができません。日本企業がこれらの企業に対して米国原産品を含む製品を販売・提供することは、EAR違反となりえます。

11-9 日本企業が特に注意すべきポイント

① 自社製品への「de minimis」確認

自社が製造・販売する製品に米国原産の部品・技術・ソフトウェアが含まれているかを確認し、その価値の割合(de minimis)を把握しておく必要があります。特にIT機器・半導体・通信機器・精密機械等では米国原産部品の混入が多く見られます。

② FDPRへの対応(半導体・製造装置メーカー)

外国直接製品規則(FDPR)の適用範囲が近年大幅に拡大されています。特に先端半導体・半導体製造装置を扱う日本企業は、米国技術を使用した自社製品が特定の国・企業向けに輸出される場合にFDPRが適用される可能性があります。

③ 知っていながら違反(Knowing Violation)

EARでは、相手方が禁止エンドユーザーであることを「知っていながら」取引した場合、より重い制裁が科せられます。「知っていること(Knowledge)」の定義は広く、合理的な確認をしなかった場合も含まれる場合があります。

確認すべき事項具体的な方法
取引相手のリスト確認BIS Consolidated Screening List(無料オンラインツール)、OFAC SDNリストの照合
品目のECCN確認メーカーへのECCN確認書(CCATS申請等)、または自社での分類
de minimis計算製品に占める米国原産部品の価値割合を計算・記録する
エンドユーザーの用途確認エンドユーザー証明書(EUC)の取得、レッドフラッグの確認

11-10 EARと日本の外為法の比較

項目日本の外為法米国のEAR
管轄機関経済産業省米国商務省BIS
根拠法外国為替及び外国貿易法輸出管理改革法(ECRA)・EAR
品目分類輸出令別表第1(1〜16項)ECCN(Commerce Control List)
域外適用原則なし(日本国内の取引が対象)あり(米国原産品・技術は世界中で追跡)
再輸出規制間接的に規制(仲介貿易取引等)直接的に規制(再輸出許可制度)
制裁リスト外国ユーザーリスト(EUL)Entity List、DPL、UVL、SDN等
違反時の罰則最高10年の懲役または10億円の罰金(法人)最高20年の禁錮または100万ドルの罰金(刑事)、輸出特権の剥奪等
注意:両法令の同時遵守が必要

日本企業は日本の外為法とEARの双方を同時に遵守する必要があります。外為法上は許可不要でも、EAR上は許可が必要な場合があります。また逆にEAR上は問題なくても、外為法上は許可が必要な場合もあります。社内の輸出管理体制は両法令を念頭に置いて整備する必要があります。

11-11 EAR違反の制裁

制裁の種類内容
民事制裁金違反1件につき最高約35万ドル(または取引価値の2倍のいずれか大きい方)
刑事罰(個人)最高20年の禁錮および最高100万ドルの罰金
刑事罰(法人)最高500万ドルの罰金
輸出特権の剥奪米国の輸出管理対象品目の一切の取引を禁止。Denied Persons Listへの掲載
Entity Listへの掲載取引相手として指定され、他社も当該企業との取引に個別許可が必要となる
実務上のポイント

EAR違反の制裁は、米国との取引関係・サプライチェーンへの影響が甚大です。Denied Persons Listに掲載された場合、米国から一切の品目を調達できなくなるため、製造業では事業継続が困難になります。自主開示(Voluntary Self-Disclosure)制度を活用して早期に問題を報告することで、制裁の軽減が図られる場合があります。

付録

国別分類・参照表

輸出管理上の国別分類(ホワイト国・懸念国等)、主要な武器輸出国・輸入国、および外国ユーザーリスト(EUL)掲載国の参考情報をまとめた参照表です。最新情報は必ず経済産業省の公式資料で確認してください。

付録1 グループA(ホワイト国)一覧

外国為替令別表に掲げる国(グループA)は、通常兵器キャッチオール規制の適用が免除され、一般包括許可の対象地域となります。2023年7月21日の韓国復帰以降、27か国が指定されています(輸出貿易管理令別表第3)。

韓国の経緯(2019年除外→2023年復帰)

2004年:韓国がホワイト国(グループA)に指定。アジア唯一のホワイト国となる。
2019年7月1日:経済産業省が、韓国の輸出管理体制の不備(対北朝鮮等への不適切輸出事案の複数発生、日本側の申し入れへの対応不足等)を理由に、半導体素材3品目(フッ化ポリイミド・レジスト・フッ化水素)の輸出管理を厳格化。
2019年8月28日:輸出貿易管理令の政令改正が施行され、韓国がグループAからグループBに変更。これに伴い「ホワイト国」→「グループA〜D」の4分類への名称変更も実施。
背景:韓国側は元徴用工問題への報復措置と主張しWTOに提訴。日本側は「輸出管理の適切な運用が確認できない」ことを理由とし、徴用工問題とは無関係と主張。
2023年3月:韓国がWTO提訴を中断し、日韓局長級の政策対話が再開。経産省は3品目について特別一般包括許可の対象とする運用見直しを実施。
2023年4月28日:経産省が韓国の輸出管理体制・運用状況の実効性を確認し、グループA復帰を発表。
2023年7月21日:政令施行。韓国が正式にグループAに復帰し、4年ぶりに2019年以前の状態に全面復帰。

グループA(ホワイト国)27か国 ※2023年7月21日以降
地域国名
北米アメリカカナダ
西欧・EUイギリスドイツフランスイタリアスペインオランダベルギースウェーデンノルウェーデンマークフィンランドオーストリアスイスポルトガルギリシャアイルランドルクセンブルクチェコハンガリーポーランドブルガリア
アジア韓国(2023年7月復帰)
アジア・太平洋オーストラリアニュージーランド
その他アルゼンチン南アフリカ
注意

グループAの国数・構成は政令改正により変動します。本表は2023年7月21日時点の27か国。輸出の都度、経済産業省の最新の輸出貿易管理令別表第3を確認してください。また、2025年10月9日の制度改正により、グループA向けでもインフォーム通知があった場合はキャッチオール規制が適用されるようになりました。

付録2 地域グループ別の規制適用一覧

地域グループと規制の適用関係(2025年10月以降)
グループ定義・主な対象国リスト規制WMDキャッチオール通常兵器キャッチオール
グループA
(ホワイト国・27か国)
各国際輸出管理レジームに参加し、輸出管理を厳格に実施している国(輸出令別表第3)。
アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダ、ベルギー、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、オーストリア、スイス、ポルトガル、ギリシャ、アイルランド、ルクセンブルク、チェコ、ハンガリー、ポーランド、ブルガリア、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アルゼンチン(計27か国・2023年7月21日以降)
適用
(包括許可で簡素化可)
インフォーム要件のみ適用
(迂回輸出の懸念がある場合に限定)
免除
グループB国際輸出管理レジームに参加し一定要件を満たす国・地域(グループAを除く)。
※2019〜2023年の間は韓国がグループBに該当していたが、2023年7月に韓国がグループAに復帰したため、現時点でグループBに正式に指定されている国は実質的にない。将来的に該当国が指定された場合に備えた枠組みとして存在している。
適用適用適用
グループCグループA・B・Dのいずれにも該当しない国・地域
(中国・インド・メキシコ・ロシア・ウクライナ等、大多数の国)
適用適用適用
グループD
(懸念国等)
以下の2種類が含まれる(輸出令別表第3の2・別表第4)。
懸念国(別表第4):イラン・イラク・北朝鮮
国連武器禁輸国・地域(別表第3の2):アフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、イラク、レバノン、リビア、北朝鮮、ソマリア、南スーダン、スーダン(計10か国)
※イラク・北朝鮮は①②の両方に該当
適用(厳格審査)適用(厳格審査)適用(厳格審査)
グループBについての注記

グループBは「国際輸出管理レジームに参加し、一定要件を満たす国・地域(グループAを除く)」と定義されていますが、現時点でグループBに正式に指定されている国は実質的にありません。このグループは2019年に韓国がグループAから除外された際に整備された枠組みで、韓国が唯一の事例でしたが、2023年7月に韓国がグループAに復帰したため空の分類となっています。グループB〜Dへの国別割り当てについては、経済産業省の最新資料を確認してください。

付録3 主な懸念国・制裁対象国ほか

以下の国々は、WMD開発・テロ支援・国際社会の懸念等から、輸出管理上特に慎重な審査が必要とされています。なお制裁の内容・対象は随時変更されるため、必ず最新情報を確認してください。

主な懸念国・制裁対象国など(参考)
国名グループ主な懸念事由日本の輸出規制上の主な注意点
北朝鮮グループD
別表第3の2+別表第4
核・ミサイル開発、国連安保理制裁対象原則として全品目の輸出禁止(経済産業省告示)。人道支援等を除き全面禁輸。
イラングループD
別表第4(懸念国)
核開発疑惑、ミサイル開発核・ミサイル関連品目の輸出は原則不許可。外為法およびEUL掲載企業多数。
イラクグループD
別表第3の2+別表第4
国連武器禁輸国、政情不安武器・関連品目は輸出禁止。その他品目も用途・需要者の慎重な確認が必要。
ロシアグループCウクライナ侵攻(2022年〜)、軍事転用懸念2022年以降、広範な品目について輸出禁止措置を実施。半導体・工作機械等も対象。グループCだが対ロシア制裁により実質的に厳格規制。
ベラルーシグループCロシアによるウクライナ侵攻への加担ロシアと同様の輸出禁止措置の対象。グループCだが対ロシア・ベラルーシ制裁により実質的に厳格規制。
ミャンマーグループC軍事クーデター(2021年〜)、人権侵害武器・武器関連品目の輸出禁止。その他品目も慎重な審査が必要。
中国グループC軍民融合政策、先端技術の軍事転用懸念グループD(懸念国・国連武器禁輸国)ではない点に注意。ただし軍事エンドユーザー・EUL掲載企業への輸出は不許可リスクが高い。先端半導体等は特に注意。
パキスタングループC核不拡散上の懸念核・ミサイル関連品目の輸出は厳格審査。EUL掲載機関への輸出は原則不許可。

付録4 主要な武器輸出国(参考)

以下はストックホルム国際平和研究所(SIPRI)等のデータに基づく主要な通常兵器輸出国の参考情報です。これらの国への輸出は、リスト規制・キャッチオール規制の双方について特に慎重な確認が必要です。

主要な武器輸出国(通常兵器・SIPRI参考)
順位国名主な輸出品目主な輸出先
1位アメリカ戦闘機、ミサイル、艦艇、無人機中東、欧州、アジア太平洋
2位フランス戦闘機、潜水艦、地対空ミサイルインド、中東、欧州
3位ロシア戦闘機、戦車、防空システムインド、中国(制裁前)、アルジェリア
4位韓国自走榴弾砲、戦闘機、潜水艦欧州、中東、東南アジア
5位ドイツ潜水艦、装甲車、艦艇欧州、イスラエル、韓国
日本の武器輸出について

日本は2014年に「防衛装備移転三原則」を定め、厳格な審査のもとで同盟国・友好国への防衛装備品の移転を一定範囲で認めています。2024年には、日本が共同開発に参加した次期戦闘機(GCAP)について第三国輸出を可能とする政令改正が行われました。防衛装備品の輸出は外為法に加えて「防衛装備移転三原則」に基づく審査が行われます。

付録5 主要な武器輸入国(参考)

主要な武器輸入国(通常兵器・SIPRI参考)
国名主な輸入品目輸出管理上の注意点
インド戦闘機、ミサイル、潜水艦グループC。民間用途の確認は比較的容易だが、軍需転用に注意。
サウジアラビア戦闘機、ミサイル、装甲車非ホワイト国。用途・最終需要者の確認を徹底する必要がある。
カタール戦闘機、防空システム非ホワイト国。軍・政府機関向けの案件は個別に慎重な審査が必要。
オーストラリア戦闘機、艦艇、装甲車グループA(ホワイト国)。通常兵器キャッチオールは免除されるが、WMDキャッチオールは適用。
エジプト戦闘機、装甲車、艦艇非ホワイト国。軍との取引が多く、用途・需要者審査を慎重に行う必要がある。

付録6 外国ユーザーリスト(EUL)について

経済産業省が公表する外国ユーザーリスト(EUL:外国における大量破壊兵器等の開発等に関与している懸念のある企業・個人リスト)は、輸出管理の実務において必ず確認すべきリストです。

項目内容
公表機関経済産業省(経済産業局も参照可)
確認URL経済産業省ウェブサイト「外国ユーザーリスト」ページ(随時更新)
主な掲載国中国・ロシア・北朝鮮・イラン・パキスタン・インド・シリア 等
掲載企業との取引輸出令第1条の規制品目をEUL掲載企業に輸出する場合、キャッチオール規制の許可が必要
確認タイミング新規取引開始時、継続取引の定期確認(年1回以上推奨)、EUL更新のたびに確認
実務上のポイント

EULは定期的に更新されます。過去に問題がなかった取引先でも、EULに新たに掲載される場合があります。輸出審査プロセスに「EUL確認」を組み込み、定期的な確認を習慣化することが重要です。

付録7 関係機関・参考資料

機関・資料名内容・用途
経済産業省 貿易経済協力局外為法・輸出管理の主管省庁。許可申請・相談窓口
CISTEC(安全保障貿易情報センター)輸出管理の専門機関。ICP認定、研修、相談対応
JETRAS(電子申請システム)輸出許可の電子申請システム(経済産業省)
米国BIS(産業安全保障局)EAR・Entity List等の管轄機関
BIS Consolidated Screening ListEntity List・DPL・UVL等を一括検索できる無料ツール
SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)世界の軍備・兵器移転データの参考資料
国連安保理制裁委員会国連制裁対象国・個人・団体のリスト