人質軟禁事件!? その4
とにかくこの部屋から出たい、それが正直な気持ちだった。
あと少しだったのに・・、セルパ一味から胸元を掴まれているSさんを横目
に見ながら、わたしは天を仰いだ。
Sさんの放った一言がきっかけで武力闘争やむなしという雰囲気になり、ふ
と中学時代にケンカの強かった先輩から教わったケンカに勝つための極意な
るものを思い出した。
@先手必勝、A一撃必殺
そんなペルー事件のようにうまくいくはずもない。
たしかゲーセンで計った時のわたしのパンチ力は80Kぐらいだったか・・。
わたしは再びセルパに、金銭決着を要求した。
セルパだって結局はお金が目当てなのである。払わないといっているSさん
よりも払うといっているわたしと交渉したほうがラチがあくはずである。
結局、再び一万六千円で解決のメドがついた。
これしか持ってないといっている以上、結論はこうなるしかない。
ようやくの思いで話がまとまって、私は財布から一万六千円を取りだしてセ
ルパに支払おうとしたところ、アイツ!、人の財布の中を覗き込んできた!
「なんだオマエ! いっぱい持ってるじゃないか。もっと出せ!」
「これは帰りの交通費だ」
「てめえ、持ってないって云ったじゃないか」
「何云ってんだ。アンタこそこれ以上取るのか、ホントに取るのか? オレ
から取った以上の損害を与えてやるぞ。絶対に後悔させてやる。必ず後悔
させてやる。」
わたしとセルパは激しい攻防を繰り返した。最後の大激戦だ。
一時間近くにも及ぶ交渉の苦労も、この駆け引きですべてが決まるのである。
私は強気にも口論しながらSさんのいるドアの方に歩きだし、そのドアの前
でSさんを封じ込めている門番の前で「どけ!」といわんばかりに仁王立ち
した。
「二万だ。二万払え!このやろう」セルパが叫んだ。
わたしは財布からその金額を抜き取り、やむなく支払った。
そして再び門番の方に向き直ると、遂にドアは開かれた。
「てめえなんか、二度とくんジャねえぞ! バカヤロー」、セルパの最後の
罵声を浴びながら、わたしとSさんは、やっと自由の身になった。
良かった。生きて出てこれた。私は正直いって安堵した。
やっとの思いで出てこれた喜びを、Sさんと共に分かち合おうとした。
「とにかく、出てこれて良かったよ」
「・・・」
「二万ならしょうがないよ」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
Sさんの怒りは、頂点に達していた。
とべこんちぬえ
Sさんの怒りの矛先はどこへ?
次回、総決算!
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