人質軟禁事件！？　その１

　お恥ずかしい話で恐縮ですが、今日は私の苦い経験をお聞きください。題
して「人質軟禁事件」です。
  あれは数年前の年末の出来事です。職場の忘年会を終え、私は同僚のＳさ
ん（空手家）と二人で、新宿歌舞伎町の夜のネオン街へと遊びに出かけまし
た。だいぶ酔っていたこともあってか、呼び込みの人の誘われるままに、私
達２人はその男の案内する店に入ってしまいました。私には不思議なことに
ふりかかる危険を事前に察知するという特殊な能力があるのですが、店に入
って１分もすると直ぐに唯ならぬ雰囲気を察して、Ｓさんに「出よう」と耳
打ちしました。
  私が席を立ち上がると直ぐに、身の丈１７５ｃｍ程のヤセ型のジャニーズ
系の店員が優しく話しかけて来ました。
「お客さん、飲み物は何になさいなすか？」
「いや、すみませんがもう出ようと思うんですよ」
「まだ来たばっかりじゃないですか」
「申し訳ない、まだ何も注文していないので、帰ります」
　私は、とにかくもう帰りますのでということをその店員に何度も告げると、
彼も観念したらしく「わかりました、８万円です」といってきました。当然、
はいそうですかと認められる金額ではありません。私と店員が激しく押し問
答をしているとようやくＳさんが酔っていながらも事態を飲み込めたらしく
「おい若いの、大人をからかうんじゃないよ」といって割って入りました。
正直いってこの手の話は何人かの知り合いから聞いたことはありました。ボ
ッタくられた人、闘った人、いろいろな人がいましたけど、幸か不幸か私の
知り合いには強者が多かった。「勝ったぜ！」という人が結構いたのも事実
でした。なんでも闘って勝つと飲食代は無料になるらしい・・。運の良いこ
とに一緒にいたＳさんはかなり酔っぱらってはいましたが沖縄出身の空手家
です。
  「ちょっと、こっち来て」、店員に誘われるままに店のドアを出るとそこ
は狭い部屋になっていました。よく見ると向こうの人数はいつの間にか５人
に増えていました。私達２人が部屋に入ると、ガチャン！と音がして・・ド
アに鍵がかけられました。「帰る」、Ｓさんはそういって反対側にあるもう
ひとつのドアに小走りに近づき、ドアのノブに手をかけた、その一瞬！  二
人の男が一斉にＳさんに襲いかかり、Ｓさんは羽交い締めにされてしまいま
した。  オー・マイ・ゴッド！！
  外へ通じる出入口は完全に閉鎖されました。ドアはロックされ、その前に
はガラの悪い人が立っています。こ、恐いぞ・・。良く考えればとてもまと
もな連中とは思えない。それこそ、生きるか死ぬかの瀬戸際だと思った。頼
りのＳさんは動きを封じ込められたままでいる。この状況でどうやって脱出
すればいいんだ？  いや、まともにここを出られるのか？

                                                     とべこんちぬえ